B型肝炎訴訟の20年の除斥期間とは?給付金額や起算点について解説

疑問小太り男

除斥期間があるから、B型肝炎の発症から20年経つと給付金もらえない!?

いいえ、発症から20年経っていても給付金は受け取れます!
ただし、金額が少なくなりますので、注意が必要です。

そもそも、いつの時点から20年経つと除斥期間に当たるのか、よく検討する必要があります。対応を誤ると、受け取る給付金が1000万円以上少なくなってしまいますので、注意が必要です。

ここでは、そもそも20年の除斥期間とは何なのか、除斥期間に該当する具体的なケース、除斥期間の開始時期(起算点)はいつか、について解説します。

また、肝がんや慢性肝炎を再発した場合という、イレギュラーなケースについても紹介します。

B型肝炎訴訟における20年の除斥期間とは?

B型肝炎訴訟とは、幼少期の集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)によって、B型肝炎ウイルスに感染した方などが、国に損害賠償を請求するための手続きです。

国による損害賠償は給付金という形で支給され、その金額はB型肝炎の病状などに応じて、50万円から3600万円となっています。

給付金の対象者の詳しい条件については、次の記事をご確認ください。

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 2023.04.19

20年の除斥期間とは何か?

除斥期間とは、時の経過により当然に権利が消滅する期間のことです。

改正前の民法では、不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年経過すると消滅する、と定められていました。この20年という期間が除斥期間です。

例えば、他人に殴られて怪我をした場合、治療費や慰謝料などを相手に請求することができますが、殴られてから20年経過してしまうと、請求することができなくなってしまうのです。

B型肝炎訴訟における国への給付金請求も、この不法行為による損害賠償請求の規定が適用されます。
それでは、B型肝炎給付金も20年経過してしまうと請求できなくなってしまうのでしょうか。

20年の除斥期間が経過してもB型肝炎給付金は受け取れる!

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B型肝炎訴訟においては、20年の除斥期間を経過しても、給付金を受け取ることができます。

ただし、除斥期間が経過していない場合よりも、給付金の金額は少なくなってしまいます。
具体的には、次の表のとおりです。

給付金(除斥期間経過)

それでは、B型肝炎訴訟において、除斥期間が経過した場合とは、具体的にどのようなケースなのか順番に見ていきましょう。

給付金の金額と除斥期間の起算点

死亡から20年経過している場合

B型肝炎ウイルスが原因で死亡してから20年経過している場合、給付金は900万円です。
20年の期間の開始時点(起算点)は、死亡日です。

給付金の金額と除斥期間の起算点

肝がん、肝硬変(重度)を発症してから20年経過している場合

肝がん、もしくは肝硬変(重度)を発症してから20年経過している場合、給付金は900万円です。
除斥期間の起算点は、肝がん、もしくは肝硬変(重度)を発症した日です。

発症日については、カルテや検査結果などの医療記録に基づき、医学的知見を踏まえて総合的に判断されます。

給付金の金額と除斥期間の起算点

肝硬変(軽度)を発症してから20年経過している場合

肝硬変(軽度)を発症してから20年経過している場合は、直近1年の症状過去の治療内容によって、給付金の金額が異なります。
除斥期間の起算点は、肝硬変(軽度)を発症した日です。

発症日については、カルテや検査結果などの医療記録に基づき、医学的知見を踏まえて総合的に判断されます。

直近1年において肝硬変の症状がある場合

直近1年というのは、裁判所に提訴する日から1年前の日以降のことです。

この期間において、B型肝炎ウイルスによる肝硬変が、病理組織検査(肝臓の組織を摘出して、顕微鏡で直接観察して行う検査)や、血液検査や画像検査に基づく医師の診断書により認められた場合、給付金は600万円です。

特定の治療を受けたことがある場合

インターフェロン製剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けたことがある場合は、給付金は600万円です。

インターフェロン製剤とは
インターフェロンとは、ウイルスに感染したときに体内で作られる物質のことで、ウイルスを排除したり、増殖を防いだりする効果があります。
インターフェロン製剤とは、人工的に作られたインターフェロンのことで、注射で体内に投入することにより、肝炎を鎮静化し、肝機能を改善させる効果があります。
ステロイドとは
ステロイドとは、副腎という臓器で作られるホルモンで、その効果を応用して作られたのがステロイド薬です。
ステロイド薬には、炎症を抑えたり、免疫機能を抑えたりする効果があります。
プロパゲルマニウムとは
プロパゲルマニウムとは、有機化合物の一種で、免疫機能を高める作用があります。
薬剤として服用することで、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制する効果があります。

直近1年において肝硬変の症状がなく、特定の治療も受けたことがない場合

直近1年で肝硬変の症状がなく、インターフェロン製剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けたこともない場合は、給付金は300万円です。

給付金の金額と除斥期間の起算点

慢性肝炎を発症してから20年経過している場合

慢性肝炎を発症してから20年経過している場合は、直近1年の症状、過去の治療内容によって、給付金の金額が異なります。
除斥期間の起算点は、慢性肝炎を発症した日です。

発症日については、カルテや検査結果などの医療記録に基づき、医学的知見を踏まえて総合的に判断されます。

直近1年において慢性肝炎の症状がある場合

直近1年というのは、裁判所に提訴する日から1年前の日以降のことです。

この期間において、B型肝炎ウイルスによるALT(GPT)値(肝機能を測定する血液検査項目)の異常が6か月以上継続していることが認められた場合は、給付金は300万円です。

特定の治療を受けたことがある場合

インターフェロン製剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けたことがある場合は、給付金は300万円です。

直近1年において慢性肝炎の症状がなく、特定の治療も受けたことがない場合

直近1年で慢性肝炎の症状がなく、インターフェロン剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けたこともない場合は、給付金は150万円です。

給付金の金額と除斥期間の起算点

B型肝炎ウイルスに感染してから20年経過している無症候性キャリアの場合

B型肝炎ウイルスに感染してから20年経過している無症候性キャリアの場合、給付金は50万円です。

集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染した一次感染者の場合、予防接種時が除斥期間の起算点となります。

ただ、給付金の対象となる集団予防接種は、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日に実施されたものに限られますので、全てのケースにおいて20年の除斥期間が経過していることになります。

母子感染による二次感染者三次感染者の場合は、出生時が除斥期間の起算点となりますので、20歳以上の方は除斥期間が経過していることになります。

再発した場合は、除斥期間の起算点はいつになるのか?

疑問抱える男女肝がん、肝硬変、慢性肝炎を初めて発症したのが20年以上前であっても、再発してから20年経過していない場合は、除斥期間が経過していると言えるのでしょうか。

この点について、肝がんと慢性肝炎のケースが問題となっています。

除斥期間の起算点

肝がんを再発した場合

肝がんを再発した場合、国とB型肝炎訴訟原告との間で、次の内容の基本合意書が締結されています。

基本合意書(その2)の抜粋
多中心性発生による肝がん(過去に発症した肝がんの根治後における非がん部(治療後の残存肝)から発生した新しい肝細胞がん)を再発した場合は、当該多中心性発生による肝がんを再発した時期を肝がんの発症の時期とみなす。

つまり、最初に発症した肝がんが完全に治った後、残った肝臓の別の部位(がんではなかった部位)から新たに肝がんが再発した場合、除斥期間の起算点は、初めての発症時期ではなく、再発した時期になるということです。

除斥期間の起算点

慢性肝炎を再発した場合

慢性肝炎を再発したケースとして、「HBe抗原陽性慢性肝炎」の発症時期と「HBe抗原陰性慢性肝炎」の発症時期の、どちらが除斥期間の起算点となるか、で争われている裁判があります(2021年8月6日現在)。

HBe抗原陽性慢性肝炎とHBe抗原陰性慢性肝炎とは

HBe抗原とは、B型肝炎ウイルスを構成するタンパク質のひとつで、ウイルスが増殖しているときに検出され、HBe抗原陽性となります。

幼少期にB型肝炎ウイルスに感染すると、HBe抗原陽性の状態が続き、15歳から30歳ぐらいで肝炎を発症します。そのうち85~90%はすぐに肝炎が鎮静化しますが、残りの10~15%は肝炎が継続し、慢性肝炎となります。
これが「HBe抗原陽性慢性肝炎」です。

その後、多くの場合は抗体ができ、HBe抗原が少なくなって陰性化するとともに、肝炎も鎮静化し、非活動性キャリアとなります。

この非活動性キャリアの10~20%は、長期間経過した後に、HBe抗原陰性の状態でB型肝炎ウイルスが再増殖し、慢性肝炎を発症します。
これが「HBe抗原陰性慢性肝炎」です。

日本肝臓学会の「B型肝炎治療ガイドライン(第3.4版)」によると、

「HBe抗原陰性の慢性肝炎は、間欠的に ALT と HBV DNA 量の上昇を繰り返すことが多く、自然に寛解する可能性は低いHBe 抗原陽性の慢性肝炎と比較し高齢で線維化進展例が多いため、より進んだ病期と認識すべきである。」

とされています。

最高裁判所の判断

裁判の風景

上記のような、HBe抗原陰性慢性肝炎の特徴を踏まえ、令和3年4月26日の最高裁判所の判決では、除斥期間の起算点について、次のように示されています。

最高裁判例(令和3年4月26日)の抜粋
HBe抗原陰性慢性肝炎は、慢性B型肝炎の病態の中でもより進行した特異なものというべきであり、どのような場合にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症するのかは、現在の医学ではまだ解明されておらず、HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時点で、後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症することによる損害の賠償を求めることも不可能である。

HBe抗原陽性慢性肝炎を発症したことによる損害と、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害とは、質的に異なるもの

HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については、HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるというべきである。

つまり、最初にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し、長期間経過した後に、HBe抗原陰性慢性肝炎を再発した場合、除斥期間の起算点は再発した時期になるということです。

ただし、この最高裁判所の判断はまだ制度化はされていません(2021年8月6日現在)。
詳しい内容は弁護士に相談してみましょう。

除斥期間経過で和解した場合、追加給付金は全額受け取れる!

通常、国と和解した後にB型肝炎の病態が進行した場合は、最初に受け取った給付金と、進行した病態で受け取れる給付金の差額が、追加給付金として支給されます。

ただし、20年の除斥期間が経過したものとして和解し、給付金を受け取った後に、B型肝炎の病態が進行した場合は、進行した病態で受け取れる給付金の全額が追加給付金として支給されるのです。

例えば、除斥期間が経過した無症候性キャリアとして50万円の給付金を受け取った後に、慢性肝炎を発症した場合は、1250万円の追加給付金を受け取ることができます。

また、除斥期間が経過した慢性肝炎として300万円の給付金を受け取った後に、肝がんを発症した場合は、3600万円の追加給付金を受け取ることができます。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

B型肝炎訴訟で国に給付金を請求するためには、裁判所の手続きが必要です。
自分ひとりで手続きをすることもできますが、専門的なノウハウが必要ですので、手間や時間がかかります。スムーズに手続きするには、法律の専門家である弁護士に依頼する方がよいでしょう。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

訴状などの書類作成を任せることができる

給付金を請求するには、訴状や証拠一覧などの書類を作成しなければなりません。
これらは、裁判所に提出する書面ですので、法律の専門家である弁護士に任せた方が、迅速に、滞りなく作成することができます。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

必要書類収集のサポートを受けることができる

裁判所には、証拠資料となる血液検査結果や医療記録(カルテ)、公文書など、さまざまな書類を提出します。これらの必要書類を収集するには、医療機関や市区町村役場、場合によっては、卒業した小学校などとも、やりとりしなければなりません。
ご自身で、全てこのようなやりとりを進めると、かなりの労力を要しますが、弁護士がいれば、わからないときにアドバイスを受けたり、医療機関や役所への案内書を作成してもらったりすることができます。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

書類の精査により不備を防ぎ、迅速に給付金を受け取ることができる

集めた必要書類を、そのまま提出するだけでは、内容が間違っていたり、不足があったりします。完璧に集めたつもりでも、医療記録などの記載内容によって、新たな事実が判明し、追加書類を求められることもあります。
その点、弁護士がいれば、提出前に書類を隅々までチェックし、入念に精査しますので、極力、不足書類が出ないように準備することができます。その結果、給付金を受け取るまでの期間を短縮することが可能です。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

裁判所への出廷を任せることができる

裁判所には、平日の日中に出廷しなければなりませんが、普通に働かれている場合には、なかなか日程を調整するのが難しいのではないでしょうか。
弁護士に依頼していれば、弁護士が代理人として、代わりに裁判所に出廷してくれますので、ご自身で出廷する必要はありません。その結果、時間と労力の大幅な節約ができるでしょう。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット

給付金の4%分が上乗せで支給される

弁護士に依頼して、手続きをした場合は、給付金の4%分が訴訟手当金として上乗せ支給されます。例えば、弁護士に依頼して、50万円の給付金が支給される場合は、その4%の2万円が上乗せされ、総額52万円が支給されます。

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国と和解をして給付金を受取った後に、B型肝炎の病状が進行してしまった場合には、追加給付金を請求することができます。
例えば、慢性肝炎で1250万円の給付金を受け取った後に、肝がんを発症してしまった場合には、肝がんの給付金3600万円と、受け取った1250万円との差額の2350万円が追加給付金として支給されます。
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