会社破産のダメージを最小限に!従業員のために会社ができる5つの事

落ち込むビジネスマン

「会社を破産させることになったが、従業員には何をしたらいいのだろう…」

会社が債務超過状態になり、どうしようにも返済が出来なくなると、最終手段として会社を破産させることを検討しなければなりません。
破産直前になると、お金が足りず、従業員への給料が未払になっていたり、解雇する際の解雇予告手当や退職金などを、十分に用意できなくなっていたりするケースが多くあると思います。
この記事では、経営者が従業員に破産を伝える前に理解しておくべき5つの事についてご紹介していきます。
この記事を最後まで読めば、破産時の従業員への対応に迷いがなくなり、またトラブルになりやすい従業員への金銭支払問題の悩みから解放されることでしょう。

破産による解雇は、「即日解雇」が現実的なケースが多い

会社が破産するとその法人は消滅する為、従業員を全て解雇しなければなりません。
労働基準法第20条では、会社が従業員を解雇する場合、会社は従業員に対して「解雇予告」もしくは「解雇予告手当の支払い」をしなければならないと定めています。

  • 解雇予告:少なくとも解雇の30日よりも前に、解雇の予告をすること。

  • 解雇予告手当の支払い:解雇の予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うこと。

解雇を伝えるタイミングの見極めは難しいですが、破産により解雇をする場合、破産申立の前に従業員を解雇できることが望ましいでしょう。
ただし、1か月以上の解雇予告期間を設けた場合、破産することを知り、「どうせ解雇されるなら少しでも何かを得たい」と、会社の財産や個人情報などを持ち出してしまう従業員がでる可能性があります。また実際には、破産することを知りながら、1か月以上通常通りの勤務を続けてもらう事は困難であり、破産処理を行う上で必要な人員以外は、解雇予告手当を支払い、即日解雇することが現実的です。

解雇予告手当が用意できない場合

即日解雇の際に解雇予告手当の用意ができない場合、解雇予告手当なしで解雇することを検討しなければならなくなります。このような場合に、支払われなかった解雇予告手当は、「破産債権」として破産手続きの中で従業員に配当をすることになります。
得られるはずのお金が支払われないまま、会社が破産することを知り、怒らない従業員はいません。会社が支払えなかったお金は、どういった流れで従業員に支払われる予定なのかをきちんと説明して、従業員の不安を取り除いてあげましょう。

「労働債権」には優先順位がある

給料袋会社が破産をすると、破産管財人は、債権の優先度に応じて債権者への弁済や、財産の分配を行います。実際に弁済や配当を主導するのは、破産管財人ですが、債権にはどういった優先度があるのか、経営者は当然理解しておかなければなりません。
破産に関する債権の優先度は以下のように定められています。

財団債権優先的破産債権>一般的破産債権>劣後的破産債権>約定的破産債権

破産法では、弁済の重要度などから、債権を「財団債権」と「破産債権」に分けています。
ここでは、従業員の「労働債権」と関係の深い、「財団債権」と「優先的破産債権」についてご紹介していきます。

そもそも、労働債権とは?

    労働債権とは、労働の対価として従業員に支払われるべき給料や退職金、賞与が未払となったまま会社が破産した場合に、弁済されるべき権利の事を言います。

    財団債権(破産開始手続き開始決定前3か月以内の従業員への給料等)

    財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいいます。「破産開始手続き開始決定前3か月以内の従業員への給料」は、財団債権に含まれ、破産債権よりも優先して支払いを受けることができます。また、ここでいう「給料」には、基本給以外の固定手当や、破産開始手続き開始3か月以内に発生した賞与も含まれます。退職金については、退職金のうち、退職前3か月間の給料相当額が財団債権として扱われます。
    なお、財団債権は破産財団が不足していない限り、原則的には全額について随時弁済が行われます。破産財団が不足する場合には按分弁済が行われます。

    優先的破産債権(破産開始手続き開始決定前3か月より前の従業員への給料等)

    「破産債権」とは、「破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもの」とされており、破産手続きによって配当されます。
    「優先的破産債権」とは、「破産債権」の中で、特に優先的に配当され、「財団債権ではない従業員の給料」(破産開始手続き開始決定前3か月より前の給料等)は優先的破産債権に含まれます。また、「解雇予告手当」は、原則として「優先的破産債権」に含まれます。なお、破産債権は財団債権をすべて弁済してから配当が行われ、財団債権のように全額について随時弁済を受けることはできません。

    実際にお金が無ければ弁済できない

    残高不足破産財団に資力がある場合、未払となった従業員の給料や退職金は、破産手続きによって支払われる可能性があります。しかし、破産の局面では、従業員の「労働債権」に充てるべき破産財団が十分でないことも多くあります。破産財団が足りない場合には、いくら「労働債権」を有していても、従業員は支払いを受けることができません。
    この様な場合には、「未払賃金立替制度」を利用することで、従業員は破産財団からは支払われなかった金額のうち、一定額を得ることができる可能性があります。未払賃金が有り、破産財団が十分ではないことがわかっている場合、経営者は「未払賃金立替制度」について従業員に説明できるように、十分に理解しておく必要があります。
    「未払賃金立替制度」については、次章で詳しくご紹介していきます。

    「未払賃金立替制度」を利用できれば、従業員は一定額のお金を取り戻せる

    一定の条件に該当した場合、従業員の未払賃金等について「独立行政法人労働者健康福祉機構」が実施する「未払賃金立替制度」を利用できる場合があります。この章では、「未払賃金立替制度」を利用するための条件や、立替払を受けられる金額等についてご紹介していきます。

    未払賃金立替制度には、5つの適用条件がある

    厚生労働省のホームページでは、未払賃金立替制度で立替払を受けることができるのは、次の5つ要件を満たしている場合とされています。

    ①使用者が1年以上事業活動を行っていたこと

    ②使用者が倒産したこと
     なお、倒産については、下記の2つ場合に分けて補足説明がされています。

    ②倒産の定義

      ≪法律上の倒産≫

      [1]破産、[2]特別清算、[3]民事再生、[4]会社更生の場合

      ≪事実上の倒産≫

      →中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合 

      ③労働者が下記の期間に退職した者であること

      ③退職の時期

      ≪法律上の倒産≫の場合、倒産について裁判所への申立て等が行われた日

      ≪事実上の倒産≫の場合、労働基準監督署への認定申請が行われた日

      上記該当日の、6か月前の日から2年の間

      労働者が未払賃金の額等について、下記の証明または確認を受けていること

      ④未払賃金額等についての証明・確認

        ≪法律上の倒産≫の場合、破産管財人等による証明

        ≪事実上の倒産≫の場合、労働基準監督署長による確認

        ⑤労働者が下記の期間に独立行政法人労働者健康安全機構に立替払の請求を行っていること

        ⑤請求の時期

          ≪法律上の倒産≫の場合、破産手続開始の決定等がなされた日

          ≪事実上の倒産≫の場合、労働基準監督署長による認定日

          上記該当日の翌日から起算して2年以内

            立替払いの対象となる金額には上限がある

            未払賃金立替制度で立替払いの対象となる範囲は、以下であるとしています。

            • 立替払の対象となる未払賃金は、労働者が退職した日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職手当のうち、未払となっているもの
            • 立替払をする額は、未払賃金の額の8割である。ただし、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の範囲で上限が設けられている

            対象とならないもの

            • 上記期間中に未払いとなったボーナス
            • 総額が2万円未満の未払賃金

            制度によって建て替えられた賃金債権の求償についての性質

            未払賃金立替制度によって建て替えられた賃金債権の求償については、以下の性質があるとしています。

            立替払した場合は、独立行政法人労働者健康安全機構がその分の賃金債権を代位取得し、本来の支払責任者である使用者に求償する

            つまり、独立行政法人労働者健康安全機構は、使用者に成り代わって、従業員へ立替払いを行ってくれますが、立替払いをした分は、後に使用者に求償されます

            厚生労働省:未払賃金立替払制度の概要と実績

            従業員に破産を伝える前に準備しておくべき5つの事務手続き

            雇用保険破産により解雇される従業員の多くは、大急ぎで次の就職先を探さなければなりません。破産の局面では、会社が再就職先の斡旋などの具体的な支援を行うことは難しく、退職後の事務手続きが速やかに行えるように、必要な書類などを万全な状態にしておくことが現実的な支援となります。この章では、従業員に破産を伝える前に準備しておきたい5つの事務手続きをご紹介していきます。

            離職証明書の用意

            会社都合で従業員と解雇すると、従業員は「特定受給資格者」となり、自己都合退職した場合よりも良い条件で失業保険が受給できます。失業保険を受給するための離職証明書は、会社が〔従業員の被保険者証カード〕〔被扶養者用カード〕を回収し、日本年金機構へ提出することで、会社宛てに交付されます。職を失った従業員が、1日でも早く失業保険を受給できるように、速やかに手続きを行いましょう。

            資格喪失届の提出・健康保険証の回収

            従業員は解雇されると、健康保険・厚生年金保険の資格を失うため、国民健康保険と国民年金に切り替える必要があります。経営者は被保険者資格喪失届を日本年金機構および、加入している健康保険組合に提出しましょう。また、その際に健康保険証の返納も併せて行う必要があります。退職の際に従業員から健康保険証を回収しておきましょう。

            源泉徴収票の用意

            解雇された従業員が、再就職先で源泉徴収票の提出を求められることが有ります。また、従業員自身が年末調整をする場合にも、源泉徴収票は必要になります。解雇日と同日に源泉徴収票を交付できるように、源泉徴収した日までの計算をしておきましょう。なお、解雇日以降に源泉徴収が発生した場合は、再計算をしてできる限り速やかに再交付してあげましょう。

            未払賃金の計算

            従業員に対して、未払いの給料等がある場合には、従業員も債権者となります。破産手続きが開始されたら、従業員が速やかに債権届出書を提出できるように、退職日までの未払額を計算して従業員に伝えておきましょう。

            従業員の勤怠に係る資料の用意

            従業員の労働債権の金額について、根拠となる資料を破産管財人に引き継ぐ必要があります。賃金台帳やタイムカードなどを整理しておきましょう。

            廃業に伴う従業員の解雇について、アドバイスが必要な方はこちらもご参照ください

            我が社廃業の時「会社VS従業員」を回避するための7つのポイント

            さいごに

            従業員に給料を支払えていないまま、会社を破産させることは、とても心苦しい事かと思います。破産手続きによって未払の給料を払える場合もありますが、十分な金額を払えないまま清算が終わってしまう場合も多くあります。解雇後の従業員の不利益を少しでも減らせるように、経営者は従業員に伝えるべきことを十分に理解し、必要な書類を準備しておくことが肝心です。さいごに重要ポイントを振り返ってみましょう。

            【1】破産による解雇は、「即日解雇」が現実的なケースが多い
            【2】従業員の労働債権には優先順位がある

            ①財団債権(最も優先される)

              ・破産開始手続き開始決定前3か月以内の従業員への給料等
              ・破産開始手続き開始3か月以内に発生した賞与
              ・退職金のうち、退職前3か月間の給料相当額

              優先的破産債権(財団債権の次に優先される)

                ・破産開始手続き開始決定前3か月より前の給料等
                ・解雇予告手当

                【3】従業員が労働債権を有していても、破産財団にお金が無ければ弁済できない 
                【4】「未払賃金立替制度」を利用できれば、従業員は一定額のお金を取り戻せる

                未払賃金立替制度の適用条件

                  ①使用者が1年以上事業活動を行っていたこと
                  ②使用者が倒産したこと
                  ③労働者が該当の期間に退職した者であること
                  ④労働者が未払賃金の額等について、証明または確認を受けていること
                  ⑤労働者が該当の期間に独立行政法人労働者健康安全機構に立替払の請求を行っていること

                  未払賃金立替制度の対象となる金額

                  ①立替払の対象となる未払賃金は、労働者が退職した日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職手当のうち、未払となっているもの

                  ②立替払をする額は、未払賃金の額の8割である。ただし、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の範囲で上限が設けられている

                  ≪※対象とならないもの≫
                  ・上記期間中に未払いとなったボーナス
                  ・総額が2万円未満の未払賃金

                  制度の求償権

                    ・立替払した場合は、独立行政法人労働者健康安全機構がその分の賃金債権を代位取得し、本来の支払責任者である使用者に求償する

                    【5】従業員に破産を伝えるまでに、必要な事務手続きを準備しておく 

                    準備しておくべき5つの事務手続き

                      ①離職証明書の用意
                      ②資格喪失届の提出・健康保険証の回収
                      ③源泉徴収票の用意
                      ④未払賃金の計算
                      ⑤従業員の勤怠に係る資料の用意

                      最後までお読みいただきありがとうございました。