交通事故の示談金とは?示談金内訳と計算基準や相場をかんたん解説!

車と電卓

交通事故における示談とは、被害者と加害者の話し合いによって、損害賠償の内容を取り決めることです。

怪我をしたら治療費や入院費だけでなく、交通費や付き添い費用などのさまざまな費用がかかります。
さらに、怪我で仕事ができないことにより収入が減ってしまうという損害もありますし、そのことに対する慰謝料も発生します。

ここでは、どのような費用や損害を示談金に含めることができるのか、その相場や基準はいくらぐらいなのかについて解説していきます。

示談金の内訳

交通事故の被害者が加害者に賠償請求できる損害には、大きく分けて、積極損害、消極損害、慰謝料、物損などがあります。

具体的な項目は、下表のとおりです。

示談金に含まれる損害の種類

積極損害消極損害慰謝料物損その他損害と調整要素
治療費休業損害傷害慰謝料修理費遅延損害金
付添費用・看護料後遺障害逸失利益後遺障害慰謝料評価損過失相殺
将来介護費死亡逸失利益死亡慰謝料代車使用料損益相殺
雑費休車損同乗事故減額
通院交通費・宿泊費積荷等の損害素因減額
子の学習費・保育費雑費
装具・器具購入費慰謝料
家屋・自動車改造費
葬儀関係費
診断書等の費用
弁護士費用

それぞれの金額の計算基準には、自賠責保険基準(自賠責保険で決まっている基準)、任意保険基準(各保険会社の基準)、弁護士基準(裁判例をもとに日弁連交通事故相談センターなどが作成した基準)の3つの基準があります。

自賠責保険では、傷害(怪我)による損害、後遺障害による損害、死亡による損害ごとに支払限度額が定められています。詳しくは下表のとおりです。

自賠責保険の上限

傷害による損害(被害者1名につき)120万円
後遺障害による損害

神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する障害

(被害者1名につき)
常時介護を要する場合(第1級)4,000万円
随時介護を要する場合(第2級)3,000万円
上記以外の後遺障害(被害者1名につき)
(第1級)3,000万円~(第14級)75万円
死亡による損害(被害者1名につき)3,000万円

 

積極損害の内訳と計算基準

怪我の診察積極損害とは、交通事故に遭ったことによって発生した費用のことです。次のような項目があります。

  • 治療費
  • 付添費用・看護料
  • 将来介護費
  • 雑費
  • 通院交通費・宿泊費
  • 子の学習費・保育費
  • 装具・器具購入費
  • 家屋・自動車改造費
  • 葬儀関係費
  • 診断書等の費用
  • 弁護士費用

積極損害

治療費

怪我の治療のためにかかった診療費、薬剤費、入院費などの費用です。
請求が認められるのは、怪我の治癒または症状固定(治療を続けてもこれ以上改善する見込みがない状態)までにかかった費用です。

自賠責保険基準

応急手当費診察料投薬料手術料処置料などについて、必要かつ妥当な実費の支払いが認められています。

入院料については、普通病室への入院に必要かつ妥当な実費ですが、被害者の怪我の状況などから医師が必要と認めた場合は、特別室の使用料が認められる可能性もあります。

免許のある柔道整復師(接骨院、整骨院)、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師による施術費用についても、必要かつ妥当な実費が認められます。

弁護士基準

必要かつ相当な実費全額が認められます。ただし、必要性や相当性がない場合は、過剰診療だとして認められない可能性があります。

入院時の特別室使用料については、医師の指示や特別の事情(症状が重篤である、一般病床の空きがなかったなど)があれば、認められる可能性もあります。

柔道整復(接骨院・整骨院)、鍼灸、マッサージ等の施術費などについては、その施術が有効かつ相当であって、特に医師の指示があるような場合には請求が認められる傾向にあります。

将来の手術費や治療費、リハビリテーション費用については、症状の内容や程度によりますが、その必要性や相当性によっては認められる可能性もあります。

積極損害

付添費用・看護料

付添費用・看護料は、被害者が通院・入院する際に、職業付添人(看護師や介護福祉士など)や近親者が付き添いをした場合に請求できます。

自賠責保険基準

自賠責保険基準では「看護料」と呼ばれていますが、看護料には、入院中の看護料通院看護料自宅看護料があります。

入院中の看護料は、原則として12歳以下の子どもに近親者が付き添った場合に認められます。
自宅看護料または通院看護料は、医師が看護の必要性を認めた場合に認められます。ただし、12歳以下の子どもの通院等に付き添った場合は、医師の証明は不要です。

それぞれ認められる金額は、下表のとおりです。

看護内容と看護料

看護の内容認められる看護料
入院中の看護(12歳以下の子どもへの近親者等の看護)1日につき4,200円
通院看護または自宅看護(厚生労働大臣の許可を受けた有料職業紹介所の紹介による者)立証資料等により必要かつ妥当な実費
通院看護または自宅看護(近親者等)1日につき2,100円

近親者等による看護の場合、上表の金額を超える休業損害が発生したことを立証できれば、1日につき19,000円を限度にして請求することが可能です。

弁護士基準

弁護士基準では、職業付添人の場合は実費全額を請求できます。
近親者による付き添いの場合は、入院1日につき6,500円通院1日につき3,300円を請求できます。また、自宅付添費についても認められる可能性はあります。

積極損害

将来介護費

将来介護費とは、症状固定した後の将来的な介護費用のことです。

自賠責保険基準

特に明確な基準はありません。

弁護士基準

後遺障害等級1級や2級に該当する後遺症が残った場合など、医師の指示または症状の程度によって必要があれば認められる可能性があります。

金額は、職業付添人による介護の場合は実費全額近親者による介護の場合は1日につき8,000円です。

積極損害

雑費

雑費とは、入院中や通院中の雑費、将来の介護などに伴う雑費のことです。

自賠責保険基準

療養に直接必要のある諸物品の購入費、使用料、医師の指示により摂取した栄養物の購入費、通信費等が認められます。

金額は、入院中の雑費は入院1日につき1,100円、通院または自宅療養中の雑費は必要かつ妥当な実費です。

弁護士基準

入院雑費については、1日につき1,500円が認められます。

積極損害

通院交通費・宿泊費

通院、転院、入院、退院のために使った電車やバスなどの料金を請求できます。自家用車を利用した場合はガソリン代、高速道路料金、駐車場代なども請求できます。タクシー利用が相当である場合には、タクシー代も請求できます。
また、付添人の宿泊費や交通費も請求できます。

金額としては、自賠責保険基準、弁護士基準ともに、必要かつ妥当な実費が認められています。

積極損害

子の学習費・保育費

交通事故で負った怪我により満足に通学ができず、留年して授業料が余分にかかったり、補習を受けたり、家庭教師や塾の費用がかかったりした場合の費用です。
また、被害者の付き添いのために、自ら子どもの面倒を看ることができなくなり、保育所に預けた場合には、その保育料を請求できる可能性があります。

自賠責保険基準

特に明確な基準はありません。

弁護士基準

必要性が認められれば、妥当な範囲で請求が可能です。

積極損害

装具・器具購入費

義歯、義眼、義手、義足などの購入費用、交換費用などです。

自賠責保険基準

医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡(コンタクトレンズ)、補聴器、松葉杖などの用具の制作、修繕、再調達等に必要かつ妥当な実費が認められます。

ただし、眼鏡(コンタクトレンズ)については、上限が50,000円です。

弁護士基準

自賠責保険基準と同様の基準で認められます。
義歯、義眼、義手、義足など、相当期間で交換の必要があるものは、将来の費用も原則として全額認められます。
ただし、将来の費用を前もって一括で払ってもらう場合は、費用総額からライプニッツ式係数によって中間利息を控除する必要があります。

他には、次のような装具・器具の費用も対象です。

  • 眼鏡
  • コンタクトレンズ
  • 補聴器
  • 車いす
  • 盲導犬
  • 電動ベッド・介護支援ベッド
  • コルセット・サポーター
  • 折り畳み式スロープ
  • 歩行訓練器

積極損害

家屋・自動車改造費

家屋のバリアフリー化、手すり取付、エレベーター設置などにかかる費用や、自動車を介護用や障害者用に改造する費用のことです。

自賠責保険基準

特に明確な基準はありません。

弁護士基準

被害者の怪我や後遺症の内容や程度などに応じて、必要性があれば相当額が認められます。

積極損害

葬儀関係費

被害者が死亡した場合の葬儀にかかる費用のことです。

自賠責保険基準

100万円

弁護士基準

150万円

積極損害

診断書等の費用

診断書・診療報酬明細書などの発行費用や、交通事故証明書・印鑑証明書・住民票などの発行費用について、自賠責保険基準、弁護士基準ともに必要かつ妥当な実費が認められます。

積極損害

弁護士費用

裁判で損害賠償請求する際に、弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用です。

自賠責保険基準

特に明確な基準はありません。

弁護士基準

認められた賠償金額の10%程度

消極損害の内訳と計算基準

松葉杖をつく男性消極損害とは、交通事故に遭ったことによって失ってしまった収入、交通事故がなければ得られたはずの収入のことです。次のような項目があります。

  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 死亡逸失利益

消極損害

休業損害

休業損害とは、交通事故による怪我のために、仕事ができずに収入が減ってしまったことによる損害です。有給休暇を使用した場合も、休業損害が認められます。

休業期間として認められるのは、事故発生時から怪我の治癒または症状固定(これ以上治療しても症状が改善しないような状態)までの期間において、実際に治療のために休業した期間

自賠責保険基準

休業1日につき6,100円
この金額を超える休業損害が発生したことを立証できれば、1日につき19,000円を限度にして請求することが可能です。

弁護士基準

休業損害の計算式は、次のとおりです。

1日当たりの基礎収入×休業日数

基礎収入の計算方法については、被害者の職業によって異なります。具体的には下表のとおりです。

職業別基礎収入

職業基礎収入の計算方法・基準
サラリーマン(給与所得者)交通事故前3か月間の給与額÷90日
自営業者(個人事業主)事故前年度の確定申告所得額+固定経費
会社役員役員報酬の労務対価部分
主婦・主夫(家事従事者)賃金センサスの女性の平均賃金

なお、休業損害については、次の記事もご参照ください。

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消極損害

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害による労働能力の低下によって、失ってしまった将来の収入のことです。言い換えると、交通事故で後遺障害を負わなければ将来得られたはずの収入ということになります。

後遺障害逸失利益の計算は、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業などの可能性、日常生活上の不便などを考慮して行います。

それを計算式で表すと、次のとおりです。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入

基礎収入とは、逸失利益の計算の基礎となる収入のことで、原則として事故前の実際の収入を基準とします。職業ごとの基礎収入は、次のとおりです。

サラリーマン(給与所得者)

サラリーマンの場合は、事故前1年間の収入額(税金等控除前の総支給額)を基礎収入とします。ボーナスや各種手当も含まれます。

ただし、概ね30歳未満の若年労働者の場合は、原則として賃金センサスの全年齢平均の賃金額を用います。
賃金センサスとは、厚生労働省によって実施されている「賃金構造基本統計調査」の通称で、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性別、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにしたものです。

自営業者(個人事業主)

自営業者、個人事業主の場合は、事故前年の申告所得額を基礎収入とします。
実際の収入と申告所得額が異なる場合は、実際の収入額を証明することができれば、その金額を基礎収入とすることができます。

会社役員

会社役員の場合は、原則として事故前年の役員報酬の労務提供対価部分を基礎収入とします。

主婦・主夫(家事従事者)

主婦・主夫の場合も、家事労働に金銭的価値があると評価され、逸失利益が認められます。

この場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計の女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入とします。
男性(主夫)の場合も、女性労働者の平均賃金額を用います。

無職者(学生・生徒・幼児等)

学生、生徒、幼児等の子どもについても、将来的に就職して収入を得る見込みがありますので、逸失利益が認められます。

この場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計の男女別全年齢平均の賃金額を基礎収入とします。

無職者(高齢者)

高齢者であっても、就労の蓋然性(ある程度の可能性)があれば、逸失利益が認められる可能性があります。

この場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計の男女別・年齢別平均の賃金額を基礎収入とします。

失業者

失業者は事故前に実際の収入がありませんので、原則として逸失利益は認めらません。
ただし、労働能力と労働意欲があり、就労の蓋然性(ある程度の可能性)があれば、逸失利益が認められる可能性があります。

この場合、特段の事情のない限り失業前の収入を参考にして、再就職によって得られるであろう収入を基礎収入とします。

労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害によって労働能力がどれぐらい低下したかを表した割合のことです。

下表の労働能力喪失率を参考にして、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況などを総合的に判断して決められます。

労働能力喪失率

後遺障害等級労働能力喪失率
第1級100%
第2級100%
第3級100%
第4級92%
第5級79%
第6級67%
第7級56%
第8級45%
第9級35%
第10級27%
第11級20%
第12級14%
第13級9%
第14級5%

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害によって労働能力が制限される期間のことです。

原則としては、症状固定日(これ以上治療しても症状が改善しないような状態に至った日)から67歳までの期間です。ただし、下表のような例外もあります。

被害者の年齢・症状と労働能力喪失期間

被害者の年齢・症状労働能力喪失期間
18歳未満18歳から67歳まで
大学生大学卒業から67歳まで
症状固定時から67歳までの期間が平均余命の2分の1より短くなる者(※)症状固定時から平均余命の2分の1まで
67歳を超える者症状固定時から平均余命の2分の1まで
むち打ち症後遺障害12級で10年程度、14級で5年程度

※平均余命は、厚生労働省が公表する簡易生命表に従います。令和2年の簡易生命表によると、男性で51歳以上、女性で46歳以上の人が、このパターンに該当します。

なお、労働能力喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力などによって原則とは異なる判断がされる可能性があります。

ライプニッツ係数による中間利息控除

逸失利益は、将来の収入を前払い一括で受け取ります。その場合、将来受け取るはずだった収入についても利息を得ることになる、という風に考えます。

このあたりの考え方がわかりにくいかもしれませんが、お金があれば、それを運用することによって利息を生み出すことができる、というのが基本的な考え方なのです。
したがって、同じ金額であっても、先に手に入れた方が、その分、多くの利息を生み出すので有利だということになります。

逸失利益は、事故がなければ、将来受け取るはずだった収入を前払いで受け取りますので、その分に付く利息については、本来は受け取ることができなかったものになります。そのため、前払いで受け取る逸失利益から、利息の分だけ差し引かなければなりません。

このように、もらい過ぎてしまう利息を、あらかじめ差し引くことを中間利息控除と言います。

中間利息控除の計算には、ライプニッツ係数という数値を用います。このライプニッツ係数は、労働能力喪失期間に応じて定められています。

後遺障害逸失利益の計算例

次のような条件で、後遺障害逸失利益の計算をしてみましょう。

  • 年齢:45歳 
  • 性別:男性
  • 職業:会社員(サラリーマン)
  • 事故前1年間の収入:総支給額500万円
  • 認定された後遺障害等級:第7級

ライプニッツ係数(抜粋)※令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合

労働能力喪失期間ライプニッツ係数
20年14.8775
21年15.4150
22年15.9369
23年16.4436
24年16.9355

まず、基礎収入は、事故前1年間の収入(総支給額)である500万円です。

次に、労働能力喪失率は、後遺障害等級が第7級ですので56%です。

最後に、労働能力喪失期間は、22年(67歳-45歳)ですので、それに対応するライプニッツ係数は15.9369ということになります。

これらの数値を、後遺障害逸失利益の計算式に当てはめると、次のようになります。

後遺障害逸失利益=5,000,000円×56%×15.9369=44,623,320円

したがって、この場合の後遺障害逸失利益は、4462万3320円ということになります。

なお、後遺障害については、次の記事もご参照ください。

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消極損害

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、死亡したことによって、失ってしまった将来の収入のことです。言い換えると、交通事故で死亡しなければ将来得られたはずの収入ということになります。

計算式で表すと、次のとおりです。

基礎収入×(1ー生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

基礎収入

基礎収入とは、逸失利益の計算の基礎となる収入のことで、原則として事故前の実際の収入を基準とします。職業ごとの基礎収入の考え方は、後遺障害逸失利益の場合と同様です。

生活費控除率

生活費控除率とは、死亡した人の収入のうち、その本人の生活費として使われていた割合のことです。

死亡すると、将来の収入が得られなくなってしまうと同時に、その人の生活費もかからなくなりますので、逸失利益から支出を免れた生活費を差し引かなければなりません。

生活費控除率には、下表のような基準があります。

生活費控除率

被害者生活費控除率
一家の支柱被扶養者1人40%
被扶養者2人以上30%
女性(主婦、独身、幼児等を含む)30%
男性(独身、幼児等を含む)50%

なお、これらの基準はあくまでも目安であって、被害者やその家族の個別的な事情に応じて、認められる生活費控除率も異なります。

また、年金は主に生活費を賄うためのものであるという考え方から、年金に対する生活費控除率は上記基準よりも高くなることが多いです。

就労可能年数

就労可能年数については、死亡しなければ就労できたであろう年数のことです。
原則として、死亡時から67歳までの年数です。

被害者の年齢によって下表のような基準もありますが、職種、地位、健康状態、能力などによって異なる判断がされる可能性もあります。

被害者の年齢と就労可能年数

被害者の年齢、収入の種類就労可能年数
18歳未満18歳から67歳まで
大学生大学卒業から67歳まで
症状固定時から67歳までの期間が平均余命の2分の1より短くなる者(※)死亡時から平均余命の2分の1まで
67歳を超える者死亡時から平均余命の2分の1まで
年金の逸失利益の場合死亡時から平均余命まで

※平均余命は、厚生労働省が公表する簡易生命表に従います。令和2年の簡易生命表によると、男性で51歳以上、女性で46歳以上の人が、このパターンに該当します。

ライプニッツ係数による中間利息控除

ライプニッツ係数による中間利息控除については、後遺障害逸失利益の場合と同様です。

死亡逸失利益の計算例

次のような条件で、死亡逸失利益の計算をしてみましょう。

  • 死亡時の年齢:45歳 
  • 性別:男性
  • 職業:会社員(サラリーマン)
  • 家族:妻(主婦)、子(10歳)
  • 事故前1年間の収入:総支給額800万円

ライプニッツ係数(抜粋)※令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合

就労可能年数ライプニッツ係数
20年14.8775
21年15.4150
22年15.9369
23年16.4436
24年16.9355

まず、基礎収入は、事故前1年間の収入(総支給額)である800万円です。

次に、被害者は、主婦の妻と10歳の子という一家の支柱であると考えられますので、生活費控除率は30%です。

最後に、就労可能年数は、22年(67歳-45歳)ですので、それに対応するライプニッツ係数は15.9369ということになります。

これらの数値を、死亡逸失利益の計算式に当てはめると、次のようになります。

死亡逸失利益=8,000,000円×(1ー30%)×15.9369=89,246,640円

したがって、この場合の死亡逸失利益は、8924万6640円ということになります。

なお、逸失利益については、次の記事もご参照ください。

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慰謝料の内訳と計算基準

車いすの男性慰謝料とは、交通事故による精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
交通事故の慰謝料には、次のような種類があります。

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

慰謝料の金額は、自賠責保険基準と弁護士基準とで、大きな違いがあります。

慰謝料

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料(傷害慰謝料)とは、交通事故で傷害(怪我)を負って、通院や入院をしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

自賠責保険基準

1日につき4,300円
対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数などを勘案して、治療期間の範囲内で決められます。

弁護士基準

原則として、入院期間と通院期間を基準として金額が決まります。基準となる金額は、通常の怪我の場合と軽症の場合とで異なります。

まず、通常の怪我の場合の基準は下表のとおりです。

Injury compensation (normal)

次に、軽症の場合は下表のとおりです。
軽症の場合というのは、むち打ち症で他覚所見がない場合や軽い打撲・挫創・挫傷の場合を指します。

Injury compensation (mild)

このように、通常の怪我で1か月(30日)通院した場合、自賠責保険基準であれば最大でも129,000円(4,300円×30日)であるのに対し、弁護士基準であれば28万円となり、弁護士基準の方が多くの慰謝料を獲得できるのです。

なお、通院期間と慰謝料については、次の記事もご参照ください。

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慰謝料

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故による怪我で後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

自賠責保険基準

自賠責保険基準では、介護を要するかどうか、後遺障害等級(後遺障害の程度)、被扶養者の有無に応じて、下表のとおり金額が決まっています。

また、介護を要する後遺障害の場合は、初期費用等のための加算がされます。

介護を要する後遺障害の場合

後遺障害等級被扶養者慰謝料の金額
第1級あり1850万円+初期費用等500万円
なし1650万円+初期費用等500万円
第2級あり1373万円+初期費用等205万円
なし1203万円+初期費用等205万円

介護を要しない後遺障害の場合

後遺障害等級被扶養者慰謝料の金額
第1級あり1350万円
なし1150万円
第2級あり1168万円
なし998万円
第3級あり1005万円
なし861万円
第4級737万円
第5級618万円
第6級512万円
第7級419万円
第8級331万円
第9級249万円
第10級190万円
第11級136万円
第12級94万円
第13級57万円
第14級32万円

弁護士基準

弁護士基準での後遺障害慰謝料は、下表のとおりです。

後遺障害慰謝料の金額(弁護士基準)

後遺障害等級慰謝料の金額
第1級2800万円
第2級2370万円
第3級1990万円
第4級1670万円
第5級1400万円
第6級1180万円
第7級1000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

上記のように、後遺障害等級第1級で比較すると、自賠責保険基準では最大でも2350万円であるのに対し、弁護士基準では2800万円となります。

自賠責保険基準と弁護士基準では、実に450万円以上の差があるのです。

慰謝料

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故で死亡したことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

自賠責保険基準

自賠責保険基準では、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料とに分けて考えます。

被害者本人の慰謝料

死亡した被害者本人の慰謝料は400万円です。

遺族の慰謝料

遺族の慰謝料は下表のとおりです。
この場合の慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母を含む)配偶者子(養子、認知した子、胎児を含む)です。

遺族の慰謝料の金額は、請求権者の人数と被害者の被扶養者の有無によって異なります。

死亡慰謝料の金額(自賠責保険基準)

慰謝料の請求権者の人数被扶養者の有無慰謝料の金額
1人あり750万円
なし550万円
2人あり850万円
なし650万円
3人以上あり950万円
なし750万円

例えば、被扶養者が3人の被害者が死亡した場合、本人分の慰謝料400万円と、遺族分の慰謝料950万円の合計1350万円についてを、遺族が受け取ることができます。

弁護士基準

弁護士基準では、死亡した本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合算して考えます。金額は下表のとおりです。

死亡慰謝料の金額(弁護士基準)

被害者の属性慰謝料の金額
一家の支柱である者2800万円
一家の支柱に準ずる者(家事の中心をなす主婦、養育が必要な子供の母親など)2500万円
その他(独身の男女、子供など)2000万円~2500万円

上記のように、一家の支柱である者が死亡した場合の慰謝料は、自賠責保険基準では最大でも1350万円であるのに対し、弁護士基準では2800万円となります。

自賠責保険基準と弁護士基準では、実に1450万円もの差があるのです。

なお、死亡慰謝料については、次の記事もご参照ください。

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物損の内訳と計算基準

全損車物損とは、事故によって車などの物が壊れた場合の損害のことです。
具体的な項目としては、次のようなものがあります。

  • 修理費
  • 評価損
  • 代車使用料
  • 休車損
  • 積荷等の損害
  • 雑費

なお、自賠責保険では物損は保証されません。次に説明する基準は弁護士基準によるものです。

物損

修理費

交通事故により車が破損した場合は、その適正な修理費相当額の請求が認められます。

なお、修理費が同種・同年式の車を買い替える費用(車の時価額に買替諸費用を加えた金額)を上回る場合は、経済的全損とみなされます。
この場合は、同種、同年式、同程度の使用状態・走行距離等の車を取得するのに必要な費用(買替差額=車の時価額と事故車売却代金の差額)の請求が認められます。

修理費については、次の記事もご参照ください。

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物損

評価損

事故車について、修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められます。

物損

代車使用料

車の修理期間または買替に要する相当期間において、代車としてレンタカーなどを使用した料金が認められます。

物損

休車損

故障した車が、タクシーや観光バスなどの営業車(業務用の車)の場合に問題になります。
相当な修理期間もしくは買替期間において、車を使った営業ができなかったことによる営業上の損失の請求が認められます。

物損

積荷等の損害

商品などの積荷の破損があった場合は、その代金や廃棄費用などの請求が認められます。

物損

雑費

車のレッカー代、保管料、廃車料などの請求が認められます。

物損

慰謝料

慰謝料は、原則として認められません。
ただし、例外もあります。詳しくは、次の記事もご参照ください。

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その他損害と調整要素

その他損害と賠償額の調整要素には、次のようなものがあります。

  • 遅延損害金
  • 過失相殺
  • 損益相殺
  • 同乗事故減額
  • 素因減額

その他損害と調整要素

遅延損害金

損害賠償金にかかる遅延損害金は、事故日から起算します。

その他損害と調整要素

過失相殺

被害者にも過失があった場合には、その態様に応じて、賠償金が減額されます。

過失割合については、事故の類型に応じて細かな基準が設けられています。詳しくは、次の記事もご参照ください。

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その他損害と調整要素

損益相殺

被害者やその遺族が、事故を原因とした保険金、労災保険給付、医療保険給付、公的年金など、事故による損害を填補する利益を得た場合は、その分だけ賠償金から控除します。

その他損害と調整要素

同乗事故減額

同乗者が、事故発生の危険性が増大するような状況を自ら作り出したり、事故発生の危険が極めて高い客観的事情が存在することを知りながらこれを認容して同乗したような場合には、同乗者に対する損害賠償金が減額されることがあります。

また、同乗者がシートベルトを装着していなかったことが、損害の発生や拡大に繋がったことが認められる場合も同様です。

その他損害と調整要素

素因減額

交通事故による怪我とその後の症状の悪化が、被害者の性格・精神的傾向、持病、身体的特徴など、被害者の事情に起因する場合には、その分だけ損害賠償金の減額が認められます。

交通事故の相談なら法律事務所MIRAIOへ

相談を受ける弁護士交通事故の被害者になってしまった場合は、どのような賠償請求ができるのか、その金額はどれくらいになるのかなど、専門的な知識が求められます。

また、初期対応を間違えてしまうと、後々取り返しのつかない不利益が生じてしまうこともありますので、なるべく早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

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交通事故の示談金交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

損害額の算出、専門的書類の作成をしてもらえる

交通事故の損害賠償を請求するには、交通事故の調査、損害額の算出、内容証明郵便の作成、示談書の作成、訴状の作成など、専門的な知識と経験が求められる作業がいくつもあります。
このような時間と手間のかかる作業を弁護士に一任することで、治療に専念することができます。

示談や訴訟の代理人になってもらえる

加害者や保険会社との示談交渉や訴訟の代理人になってもらうことができますので、ご自身で直接相手方と話す必要がありません。
この点において、精神的な負担も軽減することが可能です。

より高額の示談金を受け取ることが出来る可能性がある

弁護士に依頼した場合、損害額は弁護士会の基準で算出します。この弁護士会の基準というのは、過去の判例(裁判所の判決内容)を参考に基準額を算定したもので、自賠責保険や任意保険会社の基準よりも高額となっています。
例えば、後遺障害等級第1級の慰謝料は、自賠責保険基準だと上限1650万円ですが、弁護士会基準で算出すると上限2800万となり、実に1150万円もの差があります。

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法律事務所MIRAIOが選ばれる理由

交通事故被害について弁護士に相談されるなら、まずは、法律事務所MIRAIOでご相談ください。MIRAIOには次のような強みがあります。

相談実績14000件以上

MIRAIOは創業以来、20年以上にわたり交通事故被害の解決に力を入れてきました。実にその相談件数は14000件以上に上っています。

医学的知見が豊富

MIRAIOは、医療過誤(医療ミス)やB型肝炎訴訟にも力を入れていますので、医師との協力関係もあり、医学的な知見を豊富に持ち合わせています。
特に、後遺障害がどの等級で認定されるかについては、示談金の金額に大きく影響します。例えば、弁護士会基準による第2級の慰謝料は2370万円ですが、これが第1級に上がると2800万円となり、実に430万円もの増額が可能なのです。
そして、この認定を左右するのが医師の診断書です。MIRAIOであれば、医学的知見を駆使して、より高い後遺障害等級の認定が得られやすい診断書についてのアドバイスをすることが可能です。

損害保険会社の代理人経験も!経験豊富な弁護士が多数在籍

MIRAIOには、交通事故被害に関する経験が豊富な弁護士が多数在籍しています。中には、大手損害保険会社の代理人経験のある弁護士もおります。
示談金がいくらになるかについては、保険会社との交渉次第ですので、相手側の事情に通じていればその分交渉が有利となり、より多くの示談金をえるための効果的な戦略を立てることができます。

初回相談料・着手金無料!

MIRAIOでは交通事故の示談交渉の初回相談料・着手金は無料です。安心してご相談ください。
※ただし、弁護士費用特約付きの保険に加入されている場合は、保険会社の補償の範囲内で相談料や着手金をいただく場合があります。

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法律事務所MIRAIOでの解決事例

法律事務所MIRAIOでの、実際の解決事例をいくつかご紹介します。 

※あくまでも一例ですので、すべての事件において同じような示談金を獲得できるとは限りません。

賠償額が1000万円以上アップ!

事故の瞬間1被害者 30代 男性 会社員
事故の概要 バイクで交差点を直進中に、右折してきた自動車と衝突した。
過失割合 被害者15%
後遺障害等級 12級
保険会社の提示金額 約500万円
最終的な示談金額 約1500万円

最初に保険会社が提示してきた金額の中で、特に問題があったのが後遺障害による「逸失利益(事故がなければ得ることができたであろう将来の給与・収入など)」の額でした。
保険会社が計算した逸失利益は、約300万円でしたが、これは一般的な計算基準から見ても明らかに少なすぎる金額でしたので、MIRAIOは正当な方法で計算しなおして、約1300万円と算出しました。
さらに、慰謝料についても増額し、最終的には1500万円余りの示談金を獲得しました。

まさかの提示額10万円からの大逆転!示談金900万円を獲得!

事故の瞬間2被害者 40代 女性 アルバイト
事故の概要 自転車で横断歩道を走行中に、左折してきた自動車に衝突された。
過失割合 被害者10%
後遺障害等級 12級
保険会社の提示金額 10万円
最終的な示談金額 約900万円

最終的に後遺障害とまで認定される大怪我を負ったにもかかわらず、保険会社からの当初の提示額はたったの10万円でした。
MIRAIOは、保険会社が審査すらしていなかった後遺障害の認定を得ることに成功し、それに伴い、後遺障害の慰謝料として290万円逸失利益として約560万円を獲得しました。さらに、怪我の慰謝料や休業損害の増額にも成功し、最終的には約900万円の示談金を獲得しました。

保険会社から目を疑うような示談金を提示され、もっともらしい説明を受けたとしても、簡単には同意しないでください。納得できないところがあれば、示談書にサインする前にMIRAIOにご相談ください。

過失割合も減額して約1200万円アップ!
事故の瞬間3被害者 40代 男性 会社員
事故の概要 歩行中に後ろから自動車にはねられた。
過失割合 被害者45%⇒30%へ
後遺障害等級 8級
保険会社の提示金額 約800万円
最終的な示談金額 約2000万円

保険会社からは、後遺障害による逸失利益慰謝料として800万円余りを提示されました。
その後交渉を重ねることで、逸失利益慰謝料の合計2000万円余りの獲得に成功しました。
さらに、過失割合についても、当初は被害者45%の過失を主張されていましたが、事故当時の状況を細かく分析し、反論した結果、30%にまで下げることができました。
結果として、示談金は約1100万円以上も増額させることに成功しました。

過失割合も示談金に大きく影響が出ます。納得できないところがあれば、MIRAIOにご相談ください。