特別清算をするとどうなる?その特徴と破産との違いを簡単解説

真剣顔の社長

「長引く不況の中、何とか資金繰りしてきたけど、いよいよ限界が近づいてきた・・・。
会社を清算したいけど、取引先にはなるべく迷惑をかけたくないので、破産だけはしたくない。
たまに経済誌で「特別清算」という言葉を見かけるけど,これは一体どういう手続きでしょうか?」

会社経営者の方から、このようなご相談をお受けすることがあります。

特別清算というのは,会社の倒産手続きのひとつではあるのですが、破産や民事再生などの厳格な手続きに比べて、簡易かつ迅速で、債務返済についても柔軟な対応が可能なのです。
一方で、手続きを進めるには,特有の制限もあります。

ここでは、

  • 特別清算をするとどうなるのか。
  • 特別清算と破産の違い
  • 特別清算はどのように利用されているか

について紹介していきます。

これを読めば、特別清算の特徴がわかり、特別清算をすべきかどうかの判断の手助けとなることでしょう。

 

特別清算とは、債務超過の株式会社を廃業するための手続き

特別清算とは、債務超過に陥った会社を廃業させるための手続きです。
言い換えると、会社を清算し、消滅させるための方法で、倒産手続きのひとつです。

破産や民事再生などの他の倒産手続きでは、原則、債権額に応じて均等に返済しないといけない(債権者平等の原則)のに対して、特別清算では、不利益を受ける債権者の同意があれば、債権者によって異なる割合で返済をすることができます。
そうすることで、少額の債務を優先的に返済することができ、お世話になった取引先に迷惑をかけずに済むことができます。また、担保権が付いている債務を優先して返済することで、担保権の実行を防ぎ、大切な財産を守ることも可能です。

対象となる会社は株式会社のみです。
前提として、会社を解散する必要があります(会社法510条)。

手続きを始めるには、裁判所への申立が必要で、申立をできるのは、債権者、清算人、監査役、株主です(会社法5111項)。
そして、次の事情が認められた場合は、裁判所が特別清算の開始を命じます(会社法510条)。

1 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情のあること

会社の債権者が多数存在する場合や、債権債務関係が複雑で処理に時間がかかりそうな場合です。このような場合は、裁判所が管理して、債権者や株主に不利益が生じないようにします。

2 債務超過の疑いがあること

会社の財産総額よりも債務総額の方が上回っている疑いがある場合です。このような場合には、清算人は特別清算の申し立てをしなければなりません(会社法5112項)。

 

特別清算をするとどうなるのか?

指をさすビジネスマン特別清算の手続きが始まると、どのような効果があるのでしょうか。
また、特別清算にはどのような特徴があるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。

債権者による個別執行の禁止・中止

特別清算開始により、財産の強制執行や仮差押え、破産の申立ては禁止されます。
すでにされている手続きは中止し、特別清算開始の命令の確定により失効します(会社法5151項)。

つまり、特別清算の手続中は、債権者が会社の財産を差し押さえて強制的に債権を回収することはできなくなります
また、すでに差し押さえられている場合は、特別清算命令の確定により、差押が解除されます。

担保権

担保権は、原則として自由に実行できます。
ただし、一定の場合には、担保権実行手続きの中止命令を裁判所に出してもらうことが可能です(会社法516条)。

つまり、会社の不動産に抵当権を付けている債権者は、特別清算手続き中であっても、不動産を競売にかけてその代金から債権を回収することができるということです。

相殺の禁止

特別清算開始後に会社に対して債務を負担した場合など、一定の場合には、会社に対する債権と債務を相殺することが禁止されます(会社法517条、518条)。

つまり、特別清算手続き中に会社から借金をした債権者は、その借金と自らの債権を相殺することにより、債権を回収することはできません

財産の扱い

特別清算開始により、会社の清算は裁判所の監督下に置かれ(会社法519条)、財産の処分、借財、権利放棄、事業譲渡などをする場合には、裁判所の許可が必要となります(会社法535条、536条)。

ただ、基本的には財産の管理権と処分権は、清算人が持っています
清算人には、通常は会社の取締役が選任されますので、事実上、会社自身が財産を管理・処分できるということになります(ただし、裁判所の許可は必要です)。
その結果、会社の不動産や預金を現金化して、債権者への返済や従業員の給料に充てるというようなことも可能になります。

債権者への返済

特別清算開始後は、債権者への返済は、債権額の割合に応じて平等にしなければなりません(会社法5371項)。
ただし、一般の先取特権など一般の優先権がある債権や、特別清算のために生じた債権や特別清算手続きの費用請求権については、この対象から除かれていて、自由に返済することが可能です(会社法5153項)。
さらに、裁判所の許可を得ることで、少額債権や担保権付債権などについては、債権額の割合を超えて返済することも可能です(会社法5372項)

つまり、特別清算とは、一応は債権者平等の原則を前提としつつも、柔軟な任意的返済を可能とし、取引先との関係性を考慮した処理が可能な手続きと言えるでしょう。

次に見ていくのが、この柔軟かつ任意的な返済を体現し、特別清算の最大の特徴となっている「協定」という制度です。

協定

会社は、債務の返済について、債権者集会に協定を申し出ることができます(会社法563条)。
協定では、債務の減額や免除、支払いの猶予などの債務の返済条件を定めますが(会社法564条)、この条件は原則として債権者間において平等でなければなりません(会社法565条)。
ただし、不利益を受ける債権者の同意がある場合や、少額債権など債権者間に差を設けても衡平を害しない場合には、別段の定めが可能とされています(会社法565条)。

この点が、柔軟かつ任意的な返済を体現する協定の最大の特徴です。
つまり、形式的な平等ではなく、実質的に平等であるかどうかを重視していると言えるでしょう。

協定については、債権者集会で、出席した議決権者の過半数かつ総債権額の3分の2以上の債権者の同意によって可決されます(会社法567条)。
さらに、可決された協定は、裁判所の認可決定の確定により効力が発生します(会社法570条)。

 

特別清算と破産の違い

メリットデメリット特別清算は、同じ清算型の倒産手続きとして、よく「破産」と比較されますが、具体的にどのような点が異なっているのでしょうか。

次の表のとおり、特別清算と破産の違いを項目ごとに説明していきます。

 

特別清算破産
適用対象株式会社法人全般・個人
申立できる人

債権者
清算人
監査役
株主

債務者
債権者
理事(一般社団法人・一般財団法人)
取締役(株式会社等)
業務執行社員(合名会社等)
清算人

株主の同意一定の同意が必要不要
財産管理処分権清算人破産管財人
否認権の制度なしあり
債権者への返済方法協定配当
債権者の同意一定の同意が必要不要

 

適用されるのは株式会社のみ

破産は、各種法人に適用され、その種類は限定されていません。

一方、特別清算は、株式会社に限定されています(会社法510条)。

監査役と株主も申立できる

株式会社の破産の申立をできるのは、債務者、債権者、取締役、清算人です。

一方、特別清算の申立をできるのは、次のとおりで、債権者と清算人に加え,監査役株主も申立ができます(会社法511条)。

  • 債権者
  • 清算人
  • 監査役
  • 株主

株主の同意が必要 

破産の申立てにあたっては、株主の同意は不要です。

一方、特別清算は、前提として会社を解散する必要がありますので、解散するために一定の株主の同意が必要となります。
具体的には、株主総会の特別決議が必要で、総議決権の過半数を有する株主が出席して、出席した株主の議決権の3分の2以上の同意が必要となります(会社法309条2項11号、471条)。

清算人が財産を管理・処分できる

破産の場合、裁判所が選任した破産管財人によって財産の換価などの手続きが進んでいきます。そこでは、会社が自由に財産を処分することはできません。

一方、特別清算の場合は、会社の取締役等が清算人に就任し、財産の換価などの手続きを進めていきます。

つまり、会社の外部の人である破産管財人が主導する破産手続と、会社の内部の人であった取締役等が清算人として特別清算を主導するという違いがあります。

否認権の制度がない

否認権とは、破産手続前の会社の財産を不当に減らす行為や、特定の債権者のみへの優先的な返済について、破産管財人が不当な行為を否定してなかったことにできる制度です。
この会社の財産を不当に減らす行為を「詐害行為」、特定の債権者のみへの優先的な返済を「偏頗弁済」と言います。

詐害行為は、会社の財産を減らすことで債権者が回収できる金額が減ってしまいますので、すべての債権者を害する許されない行為です。
また、偏波弁済は、債権者平等の原則に反しますので、やはり許されない行為です。
破産手続きでは、このような許されない行為を破産管財人が否定して、処分された財産を取り戻したり、平等な返済を確保したりすることができるのです。

一方、特別清算の場合は、手続きの簡易性を優先し、このような否認権の制度は定められていません。そのため、私的整理を経たうえで特別清算を申立てるなど、柔軟な債務整理・清算手続きが可能となります。

債権者の同意が必要

破産の場合は、特に債権者の同意はいりません。

一方、特別清算の場合は、債務の返済条件についての債権者との協定について、債権者集会に出席した債権者の過半数かつ総債権額の3分の2以上の債権者の同意が必要です(会社法567条)。

 

特別清算はどのように利用されているか

さて、特別清算には以上のような特徴がありますが、実社会においてはどのように利用されているのでしょうか。

最近の申立件数の推移

まず、最近の倒産手続きの申立件数は次のとおりです。
特別清算は、破産に次いで多く、2013年以降は民事再生や会社更生の申立件数を上回っています。

 

特別清算破産民事再生会社更生
2008年385140,94185934
2009年365137,95765936
2010年365131,37034820
2011年299110,4513257
2012年25992,55530524
2013年28081,1362096
2014年30973,3701654
2015年28671,53315842
2016年29271,8401511
2017年33576,01514010
2018年31280,0121144

 

企業再生に活用されている

協力関係

特別清算は裁判所の手続きではありますが、会社側(清算人)が主導して進めていく私的整理の性格が強く、「倒産」というイメージは弱いと言われています。

一方で、一定の株主や債権者の同意が必要ですので、実際には、親会社が経営難に陥った子会社への債権を買い取り、子会社を清算する際の手法として利用されることが多いようです。

あるいは、会社の採算部門と不採算部門を会社分割や事業譲渡によって切り分け、採算部門を新しく設立した会社や既存の会社(第二会社)に承継させ、不採算事業のみが残った会社を特別清算によって清算するという企業再生の手法(「第二会社方式」)として利用されることもあります。

このように特別清算は、厳格な倒産手続きではなく柔軟な債務整理を希望する場合、あるいは企業の不採算部門を整理するための手法として活用するのが適しているといえるでしょう。

 

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会社の倒産手続きには多くの専門的な知識と経験が求められます。そして、その分野は法律や裁判だけでなく、登記、税金、労務、許認可など、多岐に渡ります。

そのような場合、特定の専門家に依頼するのではなく、多くの専門家を抱えている総合法律事務所に相談されることをお勧めします。
その点、法律事務所MIRAIOは、弁護士だけでなく、司法書士、税理士、社会保険労務士などとの協力関係がありますので、ワンストップでサービスをご提供できます。
加えて、債務整理については15万件以上もの事件を解決していますので、会社の倒産手続きについても、豊富な経験と実績があります。

会社の倒産を検討されたら、まずはMIRAIOへご相談ください!

 

まとめ

それでは、以上の内容をまとめてみましょう。

まず、特別清算とは、債務超過に陥った株式会社を廃業・清算するための手続きです。

対象となるのは、解散した株式会社に限られ、裁判所の命令によって手続きが開始します。

手続きが開始すると、債権者による個別的な執行や相殺が禁止されます。

その一方、債務の返済については、不利益を受ける債権者の同意があれば、債権者間に差を設けることができるなど柔軟な対応が可能です。

ただし、一定の株主や債権者の同意が必要となります。

いずれにしましても、特別清算は専門的な知識と経験が求められる手続きですので、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。