モラハラ離婚の慰謝料はいくら?慰謝料相場や請求方法をまるごと解説

心を壊される
情けない顔の男性

妻から毎日のようにののしられ、馬鹿にされています。離婚したら慰謝料はもらえるのでしょうか?

そのような奥様の言動は「モラハラ(モラル・ハラスメント)」に当たる可能性があり、それが原因で離婚に至ったのであれば、慰謝料を請求できるかもしれません。

ここでは、主に次の内容を説明します。

  • モラハラとはどのような行為か?
  • モラハラ離婚の慰謝料の相場
  • モラハラの証拠確保と慰謝料請求方法

これを読んで、モラハラ離婚と慰謝料請求の準備をしていきましょう。

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モラハラ離婚は慰謝料が請求できる!

離婚に伴う慰謝料は、離婚原因になった行為や離婚に至ってしまったことで受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
慰謝料が請求できる典型的な離婚原因は、不貞行為(浮気)DV(暴力)です。

モラハラ(モラル・ハラスメント)とは、暴言、脅し、無視などといった言葉や態度などによって、相手の人格や尊厳を繰り返し執拗に傷つけることで、精神的暴力ともいわれます。配偶者からのモラハラは、DVのひとつにも分類されます。

モラハラとDV防止法

DV防止法とは、配偶者からの暴力についての通報、相談、保護、自立支援などの体制を整備し、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を図ることを目的とする法律です。

ここでいう「配偶者」には、事実婚の相手(内縁関係)も含み、男女は問いません。
また、「暴力」には、身体的暴力だけでなく、精神的暴力や性的暴力も含みます。
保護命令に関する規定については、身体に対する暴力または生命等に対する脅迫のみを対象としていますが、次のような判例もあり、精神的暴力も対象となる可能性はあります。

つまり、精神的暴力であるモラハラは、法律でその防止と被害者の保護が図られているほど重大なことであり、十分に慰謝料に値する行為なのです。

平成14年7月19日 静岡地方裁判所(決定)
長年にわたり、夫は妻に対して、金銭面や家事の細かいことで命令し、思うとおりにならないと怒鳴る、罵るなどの言葉による暴力を続け、妻の外出の監視や、妻と友人との電話も嫌い、妻を殴るまではしないが殴る真似をして顔面すれすれで止めるということを繰り返し、妻はPTSDにり患したという事案で、夫に対して6か月間のはいかい禁止が命じられた。

モラハラに該当する行為

モラハラ夫男女共同参画局のホームページによると、次のような行為がモラハラに該当します。

  • 大声でどなる
  • 「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
  • 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
  • 何を言っても無視して口をきかない
  • 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
  • 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
  • 生活費を渡さない
  • 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
  • 子どもに危害を加えるといっておどす
  • なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす

詳しい事例は、次のページをご参照ください。

男女共同参画局「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは」

モラハラで離婚したときの慰謝料の相場

モラハラ妻

モラハラで離婚したときの慰謝料の相場は、50万円~300万円です。特にひどいケースの場合では、500万円の慰謝料が認められた例もあります。

具体的には、次のような判例があります。

平成28年7月21日 大阪高等裁判所 
相手の不貞を疑って、厳しく問い詰めたり、所持品検査や行動の監視や詮索をしたりしたことが婚姻破綻の主な原因であるとし、慰謝料200万円が認められた。
昭和54年1月29日 東京高等裁判所
夫が妻の男性関係にあらぬ疑いをいだき、妻に家を出るよう強要して別居し、その後も離婚を求めて執拗に嫌がらせの電話や手紙を繰り返したり、妻の父母に対して言いがかりとしかいえない訴訟を提起したりした事案で、夫に対して慰謝料500万円の支払いが命じられた。

モラハラの証拠を確保する方法

レコーダーと手帳モラハラの証拠確保の方法としては、次のようなものがあります。

  • 相手の言動を録音・録画する
  • メールや書面などを保存しておく
  • 日記などに記録しておく
  • 病院を受診し、診断書を書いてもらう
  • 第三者に証言をお願いする

方法①

相手の言動を録音・録画する

相手の暴言を録音したり、乱暴なそぶりを録画したりして、モラハラの証拠を確保しましょう。
ICレコーダーや、スマートフォンのボイスレコーダー、カメラなどがすぐに使えるように、常に準備しておきましょう。

方法②

メールや書面などを保存しておく

相手の暴言が記載されたメールを保存したり、画面をカメラで撮影したり、書面はコピーして保管したりしておきましょう。

方法③

日記などに記録しておく

相手の言動を日記などに記録するようにしましょう。
例えば、次のように、日付、時刻、言動はなるべく具体的である方が良いです。

  • 「〇月△日 □時×分 『この役立たず!』『今すぐ出ていけ!』などと大声で怒鳴り散らされる」
  • 「〇月△日 □時×分 『俺はこの家の主だぞ!なめんじゃねえ!』と言いながら、手当たり次第に物を投げつけられる」

方法④

病院を受診し、診断書を書いてもらう

相手のモラハラにより心身に不調をきたしているようであれば、心療内科などを受診し、医師に診断書を書いてもらいましょう。
うつ病、適応障害、PTSD、不眠症、パニック障害、ストレス性胃腸炎など、全てモラハラが原因になる可能性があります。

方法⑤

第三者に証言をお願いする

第三者の証言も、裁判においては立派な証拠となります。
モラハラの現場を目撃している人がいれば、裁判での証言をお願いしてみましょう。

モラハラ離婚の慰謝料請求方法/4つのステップ

慰謝料の請求方法には、次のような4つのステップがあります。

  1. 協議(話し合い)
  2. 内容証明郵便の発送
  3. 家庭裁判所への調停の申立て
  4. 裁判所への訴訟の提起

STEP1

協議(話し合い)

まずは、相手と離婚と離婚条件について協議します。その中で、慰謝料についての条件もまとめましょう。
慰謝料の条件には、次のようなものがあります。

  • 金額
  • 支払時期(いつまでに支払うか、毎月何日までに支払うか)
  • 支払回数(一括か分割か、何回分割にするか)
  • 支払方法(振込先の指定、振込手数料をどちらが負担するか)

協議がまとまったら、必ず合意内容を記した公正証書を作成しましょう。

公正証書とは、公証人が作成する公文書です。公証人とは、裁判官、検察官、弁護士などを長く務めた法律実務の経験が豊富な者の中から、法務大臣が任命する公務員のことです。公正証書を作成してもらうには、お近くの公証役場に当事者の双方が出向かなければなりません。作成費用は、数万円程度かかります。

公正証書には、「慰謝料の支払いを怠った場合には、強制執行を受けても構わない」という趣旨の文言を付けることができ、これによって公正証書は債務名義(債権の存在やその内容を証明する公的機関が作成した文書)となります。
債務名義があると、相手が慰謝料の支払いを怠った場合には、すぐに強制執行(相手方の財産や給料から強制的に回収すること)を裁判所に申し立てることができます。

STEP2

内容証明郵便の発送

相手との協議が難しい場合や、合意した慰謝料を払ってくれないような場合は、内容証明郵便で慰謝料の支払いを請求しましょう。

内容証明郵便とは、誰が、どのような内容の郵便を、誰に宛てて差し出したのかを郵便局が証明する郵便です。内容証明郵便を出すには、ある程度大きな郵便局(集配郵便局)などに、差し出す文書とその写し2通を持参する必要があります。扱っている郵便局は限られていますので、あらかじめ郵便局に確認しましょう。

STEP3

家庭裁判所への調停の申立て

協議が難しく、内容証明郵便を出しても払ってもらえない場合には、家庭裁判所に慰謝料請求調停を申し立てることもできます。
調停とは、裁判官1人と民間の調停委員2人以上で構成される調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聴くなどして、解決へのあっせんをする裁判所の手続きです。相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てをします。
双方の合意が成立すれば、裁判所が調停調書を作成します。
話し合いがまとまらなかった場合には、調停は不成立にて終了となり、その後、改めて簡易裁判所あるいは地方裁判所に民事訴訟を提起することになります。

調停調書は債務名義となり、相手方が慰謝料の支払いをしなければ、強制執行することができます。

STEP4

裁判所への訴訟の提起

内容証明郵便を出しても払ってもらえず、調停も成立しない場合には、慰謝料を請求する訴訟を提起することもできます。
裁判の結果、慰謝料の支払いを命ずる判決が出れば、その確定判決が債務名義となり、その後も相手方が慰謝料の支払いをしなければ、強制執行することができます。
あるいは、相手方が慰謝料を支払う旨の裁判上の和解が成立すれば、その和解調書も債務名義となり、強制執行が可能となります。

離婚慰謝料には時効があるので、早めに対処しよう!

離婚慰謝料には、時効(消滅時効)がありますので、注意が必要です。
モラハラが原因で離婚したことに対する慰謝料は、離婚成立日から3年が過ぎると請求できなくなってしまいます。
ただし、公正証書や調停調書などの債務名義がある場合は、合意した支払期限から10年が時効になります。

時効が迫っている場合の対処法については、次の関連記事をご参照ください。

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離婚慰謝料を請求するなら弁護士に相談しよう

離婚慰謝料を請求したいときは、弁護士に相談、依頼するようにしましょう。
自分で相手方と交渉して、慰謝料を請求することもできますが、多くの負担が伴うだけでなく、結果的に慰謝料の金額で損をする可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとしては、主に次の3点があります。

  1. 慰謝料が増額できる場合がある
  2. 相手方と話すストレスを軽減できる
  3. 書類作成や裁判手続などを任せることができる

メリット①

慰謝料が増額できる場合がある

弁護士が慰謝料を請求する場合、夫婦のさまざまな事情や過去の判例などを参考にして、適正な金額を算出します。

一方、自分で慰謝料を請求する場合、そもそも適正な金額がわからないことに加えて、なるべく早く決着させたいという心理から、相手方が払いやすい不当に低い金額で妥協してしまう恐れがあります。

このような事態を防ぐためにも、弁護士に相談して適正な金額を計算してもらいましょう。そうすることで、自分ひとりで請求する場合よりも慰謝料が増額できる可能性があるのです。

メリット②

相手方と話すストレスを軽減できる

モラハラ夫やモラハラ妻と直接話すと、強いストレスや不安を感じるのではないでしょうか。
その点、第三者である弁護士が間に入ることで、直接話し合うことはほとんどなくなりますので、ストレスも大幅に軽減できます。
その結果、慰謝料の条件について、冷静に検討し判断することができるでしょう。

メリット③

書類作成や裁判手続などを任せることができる

慰謝料を請求する内容証明郵便を送付したり、裁判所に調停の申立てをしたりするには、書類収集や書類作成という手間がかかります。
また、専門的な知識が求められる書類ですので、自分で作成すると間違いなどの不備が発生する恐れもあります。
弁護士に依頼すれば、そのような手間を省き、間違いを犯すリスクを少なくすることができます。

まとめ

以上のように、モラハラは精神的暴力とも言われるように「暴力」のひとつです。
そして、モラハラによって離婚した場合は、慰謝料請求が可能で、その相場は50100万円から200万円です。
モラハラの被害に遭ったら、次のような方法で証拠をしっかりと確保し、慰謝料を請求しましょう。

【証拠確保の方法】

  • 相手の言動を録音・録画する
  • メールや書面などを保存しておく
  • 日記などに記録しておく
  • 病院を受診し、診断書を書いてもらう
  • 第三者に証言をお願いする

【慰謝料請求の4つのステップ】

  • 協議(話し合い)
  • 内容証明郵便の発送
  • 家庭裁判所への調停の申立て
  • 裁判所への訴訟の提起

慰謝料請求にお困りの場合は、迷わず、法律事務所MIRAIOにご相談ください!