離婚慰謝料の相場は?金額の基準や高額になるケースを事例で解説!

電卓と別れる夫婦
考える女性

夫の浮気が原因で離婚します。この場合、慰謝料の相場はいくらかしら?

離婚慰謝料の金額に明確な基準はありませんが、ある程度の相場と、金額を決める際に考慮される事情があります。

ここでは、離婚慰謝料の相場と、慰謝料の計算基準となる事情について紹介していきます。
これを読んで、適正な慰謝料を請求するための準備をしていきましょう。

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離婚慰謝料の相場は100万円~300万円

離婚慰謝料とは、離婚原因となった行為(不貞行為、暴力、モラハラなど)や、離婚という結果になってしまったことによって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。

離婚慰謝料の相場は、おおよそ100万円~300万円です。

2004年度から2010年度までの間に、東京地方裁判所の裁判(全737件)で認められた慰謝料の金額は、次のようになっています。全体の約8割が300万円以下です(東京家庭裁判所家事第6部編著『東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情(第3版)』)。

慰謝料の金額件数(割合)
100万円以下208件(約28.2%)
100万円超200万円以下196件(約26.6%)
200万円超300万円以下183件(約24.8%)

離婚原因別の慰謝料相場

慰謝料が認められる離婚原因には、次のようなものがあります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄(生活費を渡さない、同居しない)
  • 暴力
  • モラハラ(モラル・ハラスメント)
  • 性交拒否(セックスレス、性の不一致)

2012年4月から2013年12月までの間に、東京家庭裁判所の裁判で認められた慰謝料の平均額は153万円でした。それを離婚原因別に集計したものは、次のとおりです。
不貞行為に対する慰謝料が、高額になりやすい傾向にあるようです。

離婚原因慰謝料の平均額
不貞行為223万円
悪意の遺棄(生活費を渡さない、同居しない)200万円
暴力123万円
モラハラ(モラル・ハラスメント)100万円
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不貞行為

浮気現場不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的な肉体関係を結ぶことです。
慰謝料は、不貞行為をした配偶者に対してだけでなく、配偶者の浮気相手にも請求できます。

不貞行為による離婚慰謝料に関する裁判例には、次のようなものがあります。

東京高等裁判所 昭和55年9月29日
16年間の婚姻生活中、次から次へと数人の女性との不貞行為を繰り返していた夫に慰謝料300万円の支払いが命じられた。
横浜地方裁判所 昭和61年12月25日
妻が夫の浮気相手である女性に1000万円の慰謝料を請求したが、浮気関係は夫が主導したものであり、夫が浮気相手のもとに走ったことにつき、妻に落ち度や責任がないかどうか疑義もあることなどから、慰謝料150万円を相当とした。
東京地方裁判所 平成10年7月31日
10年以上夫と性的関係のない妻が、男性と知り合って4年後に性的関係を持ち、夫の抑止にもかかわらず男性と同棲するに至った事案で、男性から夫への慰謝料100万円が認められた。

悪意の遺棄

家事に協力しない夫民法には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。
この同居・協力・扶助の義務に反する、次のような行為が「遺棄」に当たります。

  • 正当な理由なく、一方的に別居を強行すること
  • 十分な収入があるにもかかわらず、家に生活費を一切入れないこと
大阪地方裁判所 平成6年10月28日
夫は妻が病気のときも家事を手伝わず、さらに妻とは寝室を共にせず、居間で寝起きするようになり、性的関係もなくなり、10か月の家庭内別居と2年4か月の別居期間を経て離婚した。妻は4歳と5歳の子の面倒を看ている。この事案では、夫に慰謝料60万円の支払いが命じられた。
東京地方裁判所 昭和56年9月16日
婚姻期間3年で、夫は仕事熱心で帰宅が遅く、夫婦の会話に時間を割かず、円満な家庭を築く夫の努力不足が破綻の原因とされ、夫に慰謝料100万円の支払いが命じられた。

暴力

家庭内暴力配偶者からの暴力や虐待行為により、夫婦の共同生活ができず、その回復の見込みもなくなり、離婚に至った場合には慰謝料を請求できます。

横浜地方裁判所 平成9年4月14日
些細なことで殴る、蹴るの暴力をふるった夫に慰謝料400万円の支払いを命じた。

モラハラ(モラル・ハラスメント)

モラハラ夫モラル・ハラスメントとは、暴言、脅し、無視などといった言葉や態度などによって、相手の人格や尊厳を繰り返し執拗に傷つけることで、精神的暴力ともいわれ、DVのひとつにも分類されます。

大阪高等裁判所 平成28年7月21日
相手の不貞を疑って、厳しく問い詰めたり、所持品検査や行動の監視や詮索をしたりしたことが婚姻破綻の主な原因であるとし、慰謝料200万円が認められた。

性交拒否(セックスレス、性の不一致)

セックスレス正当な理由がなく、性交を拒否し、それが原因で婚姻が破綻した場合には慰謝料が認められます。

浦和地方裁判所 昭和60年9月10日
夫がポルノ雑誌に異常な関心を示して自慰行為に耽り、妻が性的関係を求めたのに拒否したことなどについて、夫に慰謝料500万円の支払いが命じられた。
岡山地方裁判所津山支部 平成3年3月29日
妻が婚姻当初から、男性に触れられるのが気持ち悪いと言って性交を拒否し続けた事案で、精神的な面で性交に耐えられないという医師の診断はあるものの、妻に対して慰謝料150万円の支払いが命じられた。

離婚慰謝料の金額の基準

離婚慰謝料の金額は、次のような事情を総合的に考慮して判断されますが、明確な基準があるわけではありません。

  • 離婚原因となった行為(不貞行為、暴力、モラハラなど)の程度・回数・期間
  • 婚姻期間
  • 未成年子の有無
  • 当事者の年齢・経済状態
  • 財産分与の金額
  • 慰謝料を請求する側にも落ち度がなかったか

離婚慰謝料が高額になりやすいケース

離婚慰謝料が高額になりやすいケースには、次のようなものがあります。

  • 離婚原因となった行為の有責性が高い(不貞行為、暴力、極端な浪費など)
  • 離婚原因となった行為が長期間に渡る
  • 回数が多い
  • 婚姻期間が長い
  • 慰謝料を支払う側が高収入、資産が豊富
  • 慰謝料を受け取る側が低収入、資産が乏しい

離婚原因となった行為の有責性が高い(不貞行為、暴力、極端な浪費など)

不貞行為、暴力、極端な浪費などの有責性の高い行為により離婚となった場合は、慰謝料が高額になる傾向にあります。
特に、配偶者のこのような行為により、重傷や後遺症を負ったり、うつや不眠症などの精神的疾患を患ったりした場合には、特に高額になる傾向にあります。

極端な浪費・不貞のケース(神戸地方裁判所 平成2年6月19日)
夫がゴルフやクラブ・バーなどで年間500~600万円浪費したうえに、不貞行為も重ねた事案で、慰謝料600万円が認められた。
暴力のケース(大阪高等裁判所 平成12年3月8日)
夫のたびたびの暴力により、妻が右鎖骨骨折、腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負い、運動障害の後遺症が残った事案で、慰謝料350万円のほかに、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益として、合計1714万円の損害賠償が認められた。
極端な浪費・暴力のケース(大阪家庭裁判所 昭和50年1月31日)
夫が収入を酒や女遊びに浪費し、妻に対しては毎日のように暴力をふるい、頭髪を引っ張る、手拳で殴打、足で蹴る、下駄で頭を殴ってかなりの裂傷を負わせる、出刃包丁で手指などを切りつける、蒔割りやスコップを振り上げて追いかけ回すなどした事案で、慰謝料500万円が認められた。別途、時価約1000万円の土地・建物の財産分与も認められた。
モラハラのケース(東京高等裁判所 昭和54年1月29日)
夫が妻の男性関係にあらぬ疑いをいだき、妻に家を出るよう強要して別居し、その後も離婚を求めて執拗に嫌がらせの電話や手紙を繰り返したり、妻の父母に対して言いがかりとしかいえない訴訟を提起したりした事案で、夫に対して慰謝料500万円の支払いが命じられた。

離婚原因となった行為が長期間に渡る・回数が多い

不貞行為や暴力、モラハラなどの行為が、長期間に渡っていたり、何回も繰り返されていたりする場合には、慰謝料が高額になる傾向にあります。

東京高等裁判所 平成元年11月22日
夫婦の別居期間は36年で、その間、夫が別の女性と同棲していた事案で、慰謝料1500万円が認められた。

婚姻期間が長い

婚姻期間が長ければ長いほど、離婚によって受ける精神的苦痛も大きいと考えられますので、慰謝料が高額になる傾向にあります。

仙台地方裁判所 平成13年3月22日
婚姻期間が33年で、夫が不貞行為を犯した事案で、慰謝料500万円が認められた。
なお、この事案では、妻が夫に不貞行為をやめるように言ったところ、暴言や暴行、物を投げつけるなどして妻に傷害を負わせたという経緯もあり、判決では、財産分与894万円、不貞相手からの慰謝料300万円、夫の退職共済年金の支給額の10分の3の定期的な支払いについても命じられている。

慰謝料を支払う側が高収入・資産が豊富

慰謝料を支払う側の収入が高かったり、豊富な資産を持っていたりするような場合には、慰謝料が高額になる傾向にあります。

東京高等裁判所 昭和58年9月20日
夫婦の信仰上の問題から婚姻が破綻し、一方に有責性があるとはいえない事案で、妻の月収は7万円にとどまるのに対して、夫は会社の経理部長で1000万円の年収があることから、夫に慰謝料100万円の支払いが命じられた。

慰謝料を受け取る側が低収入・資産が乏しい

慰謝料を受け取る側の収入が低かったり、無職であったり、めぼしい資産も持っていないような場合には、慰謝料が高額になる傾向にあります。

東京高等裁判所 平成元年11月22日
妻の離婚後の生活が危ぶまれること、財産分与の対象財産が乏しいことを考慮して、慰謝料1500万円が認められた。
東京高等裁判所 昭和63年6月7日
妻が高齢であり、慰謝料1000万円が認められた。

離婚慰謝料が減額になりうるケース

次のような場合には、離婚慰謝料の金額が減額される可能性があります。

  • 慰謝料を受け取る側が婚姻の継続の努力を怠った場合
  • 慰謝料を受け取る側にも不貞行為などの行為があった場合
  • 慰謝料を支払う側が低収入・資産が乏しい
東京高等裁判所 昭和50年6月26日
夫が肺結核療養中で十分な収入を得られない状況にあることを考慮して、慰謝料30万円とされた。

慰謝料を確実に受け取るための方法

慰謝料を確実に受け取るためには、次の3つの方法を実践しましょう。

慰謝料を確実に受け取る方法①

証拠を確保する

不貞行為や暴力・モラハラなど、相手方の離婚原因となる行為の証拠を押さえておきましょう。

不貞行為の証拠確保

浮気の証拠不貞行為の証拠には、次のようなものがあります。

  • 浮気相手との写真(旅先やホテルの部屋)
  • メールやメッセージアプリの送受信履歴
  • ホテルの領収書
  • 手帳や日記など
  • 避妊具など性交渉で使う道具

このような証拠を発見したら、すぐにスマホで撮影したり、可能なものはコピーを取ったりしておきましょう。
自分で証拠を押さえることが困難な場合は、探偵に浮気調査を依頼してみましょう。

暴力の証拠確保

暴力の証拠確保の方法としては、次のようなものがあります。

  • あざや傷などを撮影する
  • 医師の診断書
  • 暴行時の様子を撮影・録音する

モラハラの証拠確保

モラハラの証拠確保の方法としては、次のようなものがあります。

  • 配偶者の暴言を録音する
  • 配偶者の暴言や態度を日記などに記録しておく
  • 心療内科を受診し、抑うつ、不眠などの精神的症状の診断書をもらう

慰謝料を確実に受け取る方法②

合意した内容は公正証書にする

相手方との話し合いで慰謝料の支払いがまとまったら、その金額や支払時期、支払方法などの合意内容について公正証書を作成しましょう。
公正証書とは、公証人が作成する公文書で、お近くの公証役場で作成することができます。 作成費用は数万円かかります。 この文書があれば、相手方が支払いをしない場合には、すぐに強制執行(相手方の財産や給料から強制的に回収すること)をすることができますので、より確実に慰謝料を回収することができるのです。

慰謝料を確実に受け取る方法③

弁護士に依頼する

経験豊富な弁護士に依頼することも、慰謝料を確実に受け取るためには有効な方法です。 弁護士に依頼するメリットについては、次章をご確認ください。

離婚慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

離婚慰謝料を請求したいときは、弁護士に相談、依頼するようにしましょう。
自分で相手方と交渉して、慰謝料を請求することもできますが、多くの負担が伴うだけでなく、結果的に慰謝料の金額で損をする可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとしては、主に次の3点があります。

  1. 慰謝料が増額できる場合がある
  2. 相手と話すストレスを軽減できる
  3. 書類作成や裁判手続きなどの手間を省くことができる

弁護士に依頼するメリット①

慰謝料が増額できる場合がある

弁護士が慰謝料を請求する場合、夫婦のさまざまな事情や過去の判例などを参考にして、適正な金額を算出します。
一方、自分で慰謝料を請求する場合、そもそも適正な金額がわからないことに加えて、なるべく早く決着させたいという心理から、相手が払いやすい不当に低い金額で妥協してしまう恐れがあります。
このような事態を防ぐためにも、弁護士に相談して適正な金額を計算してもらいましょう。そうすることで、自分ひとりで請求する場合よりも慰謝料が増額できる可能性があるのです。

弁護士に依頼するメリット②

相手と話すストレスを軽減できる

例えば、浮気する夫や暴力をふるう夫とは、直接話すことに強いストレスや不安を感じるのではないでしょうか。
その点、第三者である弁護士が間に入ることで、直接話し合うことはほとんどなくなりますので、ストレスも大幅に軽減できます。
その結果、慰謝料の条件について、冷静に検討し判断することができるでしょう。

弁護士に依頼するメリット③

書類作成や裁判手続などを任せることができる

例えば、慰謝料を請求する内容証明郵便を送付したり、裁判所に調停の申立てをしたりするには、書類収集や書類作成という手間がかかります。
また、専門的な知識が求められる書類ですので、自分で作成すると間違いなどの不備が発生する恐れもあります。
弁護士に依頼すれば、そのような手間を省き、間違いを犯すリスクを少なくすることができます。

まとめ

慰謝料の相場は、おおよそ100万円~300万円です。
ただし、慰謝料の金額は、次のような事情を総合的に考慮して判断されますので、明確な基準があるわけではありません。

  • 離婚原因となった行為(不貞行為、暴力、モラハラなど)の程度・回数・期間
  • 婚姻期間
  • 未成年子の有無
  • 当事者の年齢・経済状態
  • 財産分与の金額
  • 慰謝料を請求する側にも落ち度がなかったか

また、次のような事情があると慰謝料が高額になる傾向があります。

  • 離婚原因となった行為の有責性が高い(不貞行為、暴力、極端な浪費など)
  • 離婚原因となった行為が長期間に渡る・回数が多い
  • 婚姻期間が長い
  • 慰謝料を支払う側が高収入・資産が豊富
  • 慰謝料を受け取る側が低収入・資産が乏しい

適正な慰謝料を得るためには、まずは詳しい事情を弁護士に相談して、妥当な金額はいくらぐらいになるのかを確認してみましょう。
慰謝料請求にお困りの場合は、迷わず、法律事務所MIRAIOにご相談ください!