【法律事務所勤務のFP執筆】多重債務者に多い9つの傾向とそうならないための対策

Think risk

「人生100年時代」
「老後2000万円問題」

最近は,このような言葉をよく聞きますね。少子高齢化が進む中で,私たちを取り巻く環境はここ数十年で大きく変わってきています。

「老後に受給する年金だけで生活していけるのか」
「いったいどれだけの蓄えがあれば安心した老後生活を送れるのか」

といった不安を覚えるかたも多いでしょうが,その生活態様はひとそれぞれ。
ですが,ほとんどの人に当てはまるのは,何も対策することなく年をとれば現役時代と比較して稼得能力が低下するということ。

また,「自分は安定した職に就いているから大丈夫だ」「標準的な収入を得ているから大丈夫だ」と思っていても,ちょっとしたことの積み重ねでその後の生活が大きく変わったり,少額の借金がいつの間にか膨れ上がて多重債務に陥ってしまうことや,「老後破産」をせざるを得なくなってしまうというのは,決して他人事ではありません
安心した老後生活を送るためには,現役世代のいま,お金に関する様々な認識を変えていくということが大切なのです。

筆者は,法律事務所にて十数年に渡って債務整理の業務に携わり,これまで1000件超の破産申立てを担当して様々な依頼者の方と接する中で,多重債務者に陥ってしまった人たちにある一定の共通した傾向がみえてきました。また,依頼者の方々からうかがった失敗談ついて,ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)という経歴をもつ者として,多重債務者に陥らないためにはどうすべきであったのかという対策についても考察してみました。
そこでここでは,多重債務に陥らずに安心した老後生活を送るための下準備として,現役世代の方々がどのように過ごしていくのが良いのかということを,以下の流れで解説していこうと思います

多重債務に陥ってしまった方々の傾向
ファイナンシャルプランナーからみた多重債務に陥らないための対策

繰り返しご覧いただくことで,もしご自身にも当てはまる兆候があるようであれば早めに改善をし,また,様々な対策を身に付けることでみなさんで安心した老後生活を送ることのお手伝いとなれば幸いです。

はじめに

筆者は,これまで十数年に渡って弁護士のサポート役として数多くの債務整理に携わってきました。
その中で,様々な依頼者の方々と接してきて見えてきた多重債務に陥りやすい人の客観的な傾向をこれからいくつかご紹介していきます。
事前におことわりしますが,多重債務に陥ってしまった経緯は人それぞれで,ご病気やご家庭の事情など止むに止まれず借金を抱えてしまった方も多くいらっしゃいます。ここでのご紹介などは,その方々に対する批判ではなく,あくまで客観的な傾向とそれらを踏まえたうえでの各種対策のご紹介であることを予めご了承下さい。

多重債務者に陥った人に共通する9つの傾向

Risk of falling into multiple debt

ここでは,多重債務者の方の多くに共通する傾向をご紹介します。
ご自身にも当てはまることが多数ある場合には,何かのきっかけに多重債務に陥りかねないでしょうから,十分注意が必要です。

なお,冒頭で説明いたしましたが,筆者は,法律事務所にて債務整理(とりわけその中でも破産手続き)に長年携わってきました。自己破産等の法的手続きの申立てを準備するにあたっては,現在に至るまでの借金の経緯をご本人から聴取するだけはなく,債権者から開示される取引の履歴,依頼者の通帳など,様々な客観的な資料を細部に至るまで確認をします。
こういった確認作業を多数経験してきたことで,見えてきた傾向です。

これからご紹介する9つの傾向の一覧です。

Multiple debtor trends

管理が苦手

1 ATM手数料を気にしない(傾向①)

依頼者の通帳を拝見していると,110円や220円と,時間外手数料が引かれていることを驚くほどに多くみかけます。1か月に数回ということもありますし,1日に数回ということも少なくありません。
そして,その多くはコンビニATMでの引出しです。

世の中が便利になって24時間いつでも引出しができるようになったため,ついつい必要になったら引き出せばいいと思ってしまいがちですが,「塵も積もれば」ですから,1回あたりが数百円であってもこれはあなどれません。この超低金利時代において,その数百円分の利子が預金につくためには,どれだけの期間や残高が必要か・・・と考えるともったいないですよね。

2 通帳の記帳をこまめにやらない(傾向②)

依頼者へ通帳の提出をお願いすると,「通帳がどこへいったか分からない」「もう何年も記帳していない」という方々が非常に多いです。
こまめに記帳をしていないからこそ,前述①のATM手数料に気づけていないということもありますし,また,後述する家計管理ができない要因にもなるのです。
また,預金口座を複数持っていて,そのうち数口座の利用目的が決まっていない(口座を開設しただけでほとんど使っていない)方も多いです。

3 家計簿をつけない(傾向③)

債務整理の方針を決めるにあたっては,まず始めに負債状況と並んで依頼者から月あたりの家計状況(収入と支出)を聴き取るのですが,このときに支出(食費・光熱費・通信費・日用品購入費など)をきちんと把握されている方は・・・残念ですが,少ないです。
依頼者の方々に家計簿をつけたことはないのか?と尋ねてみても,家計簿をつけることの必要性・有用性については認識しているものの,「やったことがない」「分かってはいるが面倒だ」と感じられている方が多いようです。

計画性に乏しい

1 通信費・保険料が高額,不必要な買い物が多い(傾向④・⑤)

前述③の家計状況と関連しますが,依頼者の方々に継続的に家計簿を提出してもらって家計指導をしているとよくあるのが,「通信費」「保険料」が比較的高額であることと,不必要な買い物が多いことです。
以下,費目ごとに詳しくご紹介します。

通信費

  • 特に携帯代。契約時に付属された不要なオプション(メロディコールなど)がそのまま継続されており,オプションの存在すら失念して毎月費用だけ支払っている。期間限定の無料アプリなども解約を忘れて利用もなく定額(月額)の支払いを続けている。

  • スカパーなど有料放送を,なくても困らないのに費用に見合わない利用頻度で継続しているケースも散見される。

保険料

  • 保険外交員から勧められるがまま,保障内容をそこまで気にせずに高額の保険料を支払い続けている。
  • 過剰保障となっているケースや,不必要な保障(独身一人暮らしで高額な死亡保障など)が多く見受けられる。

不必要な買い物

  • たまたま立ち寄ったコンビニで,元々は購入する目的ではなかった食料品(菓子類)や飲料をついつい購入してしまう。
  • 購入価格を気にしない(例:ペットボトルであればコンビニで買うよりもスーパーで買ったほうが安いなど)。

2 リボ払いを利用する(仕組みを理解していない)(傾向⑥)

依頼者のクレジットカードの利用履歴を拝見すると,ほぼ全員と言っても過言ではないほど,リボ払い(リボルビング払い)を利用しています。また,リボ払いの仕組みをいまいち理解できずに利用をしている方がほとんどです。
クレジット会社側としても金利を回収できることから,リボルビング払いのほうにポイント還元率等を高く設定していること多いのです。
このため,気軽にクレジットカードの利用を繰り返し,知らず知らずのうちに残高(負債)が増えてしまったという方が多いのです。

以下,リボ払いの仕組みの概要と,メリット・デメリットを説明します。

リボ払いの仕組み

クレジットカードの利用金額や利用件数に関わらず,あらかじめ設定した一定の金額を月々支払う方法。
よく似た支払方法に「分割払い」がありますが,こちらは支払回数を決めて支払う仕組みです。

メリット毎月の支払額が一定であるため毎月の支払額を抑えることができ,その金額だけを確保すればよいため家計の管理が楽になる。
デメリット

金利がかかる(15%程度のことが多い)。
利用残高に対して金利が発生するので,残高が増えればその分だけ支払総額の増加・返済期間の長期化を招くことになる。
また,毎月の支払額が一定であることから,利用頻度の感覚が麻痺して残高が増えていることの認識が薄れやすい。

内面的傾向

1 家族に借金のことを秘密(傾向⑦)

債務整理の相談者の方(とりわけ既婚の方)で特に多いのが,妻(夫)に借金の存在を秘密にしているということです。

「小遣いが足りなかったから」「生活費の足しに」「急な飲み会でお金がなかった」「パチンコの軍資金に」など,最初の借入れはふとしたことがきっかけで,妻(夫)に後ろめたい気持ちがあるため秘密にしておく。「少額だからすぐに返済できる」「次のボーナスで返済できる」という油断がもとで借入れを繰り返してしまい,気づいたときには自分だけではどうにもならない借金額に膨れ上がっていた・・・というお話を依頼者からよくうかがいます。

妻(夫)に借金を秘密にしていると,その存在を隠したまま日常生活を装うことになるため,借金を返済するためのお金を借入れから捻出するという悪循環に陥りやすいのです。

借金問題はセンシティブな問題ですし,「妻(夫)に借金のことがバレたら離婚になりかねない・・・」と心配されている方が非常に多いです。また,実際に借金のことを妻(夫)に打ち明けたら離婚することになったという依頼者の方も少なからずいらっしゃいました。

「もっと早くに妻(夫)へ相談しておけばこんなことにはならなかった・・・」という後悔のお言葉を,本当によく聞きます。

2 どこか楽観的(傾向⑧)

物事をポジティブに考え行動することはよいことだと思いますが,依頼者の方で多いのが,どこか楽観的すぎるという方です。
客観的に返済が厳しい生活状況であったとしても,「なんとかなる」と問題を先送りして楽観視し,さらに借金を重ねてしまって状況を悪化させてしまうのです。
パチンコや競馬などのギャンブルで「負け」たときも,「次は勝てる」「その次は・・・」という楽観的な気持ちからのめり込み,最初は少額だったものが次第に負けた分を取り返そうと,どんどん多額のお金を費やしてしまったという方を多くおみかけします。

また,一攫千金を狙って宝くじやtotoなどを自動定期購入(預金口座からの引き落としで定期に購入するもの)している方も少なくありません。たしかに,夢(高額当選)は買わなければ叶うものではありませんが,宝くじの1等当選確率はおおよそ1000万分の1であり,巷では「落雷に当たるのと同じ確率」と言われています。非常に低い確率ということですね。それにも関わらず,「いつか当たるかもしれない」と,1か月に数百円から数千円の出費を続けてしまっているのです。

3 頼まれると断れない(傾向⑨)

多重債務者に多い傾向の最後のご紹介は,「頼まれると断れない」ということです。

その中でも特に多いのが,保証人になることを頼まれて断れず保証人になり,主債務者が支払えなかったため保証人として責任を負うことになり,結果として破産せざるを得なくなったというケースです。
借入れにおいて保証人をつけることが求められる場合,その借入額が高額であるケースが多く,主債務者が支払不能になると,保証人も一緒に債務整理をせざるを得ないというのが少なくないのです。

また,保証人を頼まれたケース以外にも多いのが,「知人に勧誘されて保険に加入した」「知人に頼まれて物品を購入した」というものです。これらのケースでは,ご自身に真に必要なものではなかったとしても,頼まれたので断れなかった,もっと冷静になってきちんと断るべきだった,という後悔のお言葉をよく聞きます。

【準備編】多重債務者に陥らないための3つの準備

Household account book app

多重債務者に陥らずに安定した老後生活を送るための3つの準備を,ファイナンシャルプランナーの目線から以下の順序で紹介・解説していきます。

 ① お金をためるための心構え
 ② 現在の収支を把握する
 ③ 将来の収支を把握(予想)する

はじめに(心構え)

まずはお金をためるということを習慣づける必要があります。
多重債務者の方々からお話(失敗談)をうかがうと,

 「そもそもお金の管理が苦手だ」
 「お金があると,ある分だけ使ってしまう」
 「毎月のやり繰りで残った分を貯金したいと思っているがなかなかこれができない」

ということをよく聞きます。
習慣づけるためのコツとしては,「残ったお金をためる」ではなくて,「ためる分を先に分けておく」ことです。そして,分けたお金はうっかり使ってしまわないように,貯金箱でもなんでもいいので,すぐには使えないように管理します。そのようにして,まずはお金をためる習慣づけをしましょう。

また,目的や,目的に向けた経過がみえないとなかなか長続きできないものですから,まずは短い期間でもいいですから,「1年で〇〇万円をためる」といった目標をたてて,経過(その都度残高)が見えるように工夫しておくとよいでしょう。
そして,少しずつお金がたまっていくことを「楽しみ」ましょう。

現状の収支を把握

お金の管理をするには,その前提として収入と支出の全体像を把握することが必要です。
会社の経営においても,売上と支出から利益の有無をみて,それに応じて各種方策を練りますよね?それと同じことです。

そして,個人の世帯においても収支を把握するにあたっては,月単位はもちろんのこと,年単位でも把握することが重要です。1か月を超える周期での収入(ボーナスや公的扶助など)や支出(税金の支払い,子の学費など)もあるからです。

1 家計簿をつける

現状の収支を把握するうえでまずやっていただきたいのが,「家計簿をつける」ということです。

日々の支出を把握して家計簿をつけることは,無駄な支出がないか,改善すべき支出項目は何か,現状の収支であればどの程度を蓄えにまわすことができるのか等を把握できるようになります。

また,支出項目で目立ったものがあれば,それが浮き彫りになりますので,支出を抑制するための精神的歯止めにもなる意味で,非常に効果があると言えるでしょう。

1-1 家計簿を続けるためのコツ①(アプリの活用)

家計簿をつけるのが有意義なのはわかったけど,今までやったことないことを続けられる自信がないという人もいらっしゃいますよね?

そこでおススメなのが,携帯アプリを使った家計管理です。

いまの時代は,携帯電話で簡単に家計を管理できる無料アプリが多数あり,レシートを読み込んでくれるためいちいち入力する手間がいらないものもあります。また,アプリを預金口座やクレジットカードと連携させることで通帳や入出金データをわざわざ確認する必要がないものや,家族やパートナーとデータを共有できるアプリなどもあり,以前よりも飛躍的に家計簿の継続がやりやすくなっているのです。また,アプリではグラフなどで「見える化」が工夫されているため,家計簿を続けるモチベーションも維持しやすくなっています。
家計簿が長続きしなかかった人たちが挙げる要因の多くは,

「いちいちレシートをとっておくのを忘れる」
「あとでまとめるのが面倒」

といったものです。
これらアプリを使えば,そういった問題は解決できそうですね。

家計簿をつけることは,1か月・1年だけやればいいというものではありません。大事なことは,継続するということです。

1-2 家計簿を続けるためのコツ②(無理をしない)

家計簿を続けるためのもう1つのコツとしては,初めから無理をしすぎないことです。

家計簿をつけ始めたばかりの頃は,節約の結果を意識しすぎるあまり,無理をした節約をしすぎてしまう人が多いです。そして,「息切れ」してしまい,家計簿が続かなくなってしまうのです。
ダイエットで言うならば,筋トレなどをやりすぎてでオーバーワークになってしまうといったところでしょうか。よほどストイックな方でなければ,こういった無理をした生活を長続きさせるのは難しいでしょう。

そこで,まずは世帯に応じた標準的な生活費(※総務省統計局による【標準生活費】を参考にしてみて下さい)とご自身の生活費を比較して,ご自身のほうが上回る項目があるようであれば,そこを少しずつ無理のない範囲で削減・節約していくことをおススメします。次第にその生活に慣れてきたら,節約の金額を大きくしてみたり,他の項目の節約にチャレンジしてみて下さい。

2 通帳の記帳はこまめにする

収支をきちんと把握するためにも,通帳は,少なくとも月に1回程度は記帳をすることをおススメします。

昨今では,スマホで預金口座の入出金履歴を簡単に見ることができるようになりましたし,そもそも通帳レスの場合もありますから,以前に比べて通帳を記帳することの機会やその必要性も減ってきてはいます。
それでも,しばらく記帳をしないでいると,いざ記帳をしたときに「おまとめ」の記載(=一定期間の合算金額のみが印字される)になってしまって,その期間の取引詳細を確認するには銀行等にて有料で取引明細の発行を依頼する必要がでてきます。また,スマホの場合は遡って履歴を確認できる期間に限りがある(それ以上の確認の場合は取引明細の発行を依頼する必要がある)ことも多いです。

通帳をみることで収支の一片をみることになりますし,無駄なATM手数料がかかっていないかなどを知ることもできます。家計簿を続けてつけるためのクセ付けの1つのきっかけとして,月に1度の通帳記帳をおススメします。

将来的にかかるお金を把握・予想する

借金に頼らずに安定した老後生活を送るためには,計画的な資産形成が重要であり,これには家計簿で月・年単位の収支を把握するだけでは足りず,将来的に発生する世帯の構成員ごとのイベント,それにかかる費用を想定・把握し,それに向けた準備をすることが必要です。

そのためのツールとして有用なのが,①ライフイベント表,②キャッシュフロー表です。
以下,その使い方を解説します。

1 ライフイベント表

ライフイベント表とは,自分や家族が将来的にどんな生活を送りたいか,自分らしい人生を過ごすための設計,すなわち,生活設計に役立てるための設計図です。

Life event table

ここでは,今後発生するイベント(子の進学など)や,自分がやりたいこと(家族での海外旅行,車の購入など),それらに要する見込みの費用を書き出してみます。ここでのポイントは,近い将来(2~3年先)はなるべく詳細に記載して,遠い将来はおおまかにでも構わないので記載してみることです。また,安定した老後生活を送ることを目的とするのであれば,20~30年分など,なるべく長い期間の分を作成してみることです。
このように書き出してみることで,各イベントに向けた資金準備の計画が立てやすくなるのです。

ライフイベント表は,日本FP協会のHPでも書式を入手することができますので,活用してみて下さい。

2 キャッシュフロー表

ライフイベント表を作成してみたら,次は,ライフイベント表で作成した期間に応じた1年ごとの収支見込表(キャッシュフロー表)を作成してみましょう。

Cash flow chart

キャッシュフロー表を作成するうえでのポイントは,ライフイベント表と同様に近い将来(2~3年先)はなるべく詳細に記載して,遠い将来はおおまかにでも構わないので記載してみることです。
キャッシュフロー表を作成することで,現状の家計収支のままでご自身が予定しているライフイベント上の目標がかなうのかということが見えてきます。

キャッシュフロー表も,日本FP協会のHPで書式を入手することができますので,活用してみて下さい。

このように,ライフイベント表・キャッシュフロー表を作成することで,将来的な目標(ライフプラン)と改善すべき項目が少し見えてきましたね。
もっとも,これらはあくまで現時点での「予定」ですから,転職やお子さんの進学の方向性の転換など大きく変更することも多々あります。ですから,イベントの変更が見込まれる場合には,その都度ライフプランの見直しも必要になるということを忘れないようにしましょう。

【実践編】FPがおススメする4つの家計改善の方法

Asset formation by saving

ここまで,まずは現状を把握すること,次に将来的に発生するイベントを把握することが肝要であることを説明しました。ここからは,ライフイベント(目標)を達成するためにFPが推奨する4つの家計改善の方法をご紹介します。

複数の財布でお金を管理する

「お金の管理があまり得意ではない」
「お金があるとある分だけ使ってしまってなかなか貯められない」

といった方々におススメの方法は,複数の財布をもってお金を管理することです。
「複数の財布」といっても,それはあくまでイメージで,実際に財布を分けていただいてもかまいませんし,預金口座を複数用意するのでもいいです。

大切なのは,「用途ごとに分けてお金を管理する」ということです。

1 具体的な管理方法

筆者もこの複数の財布で管理するという方法を今でも実践しており,私の場合は,①生活費用の口座,②貯蓄用の口座,③投資用の口座という使い分けをしています。
具体的には,以下のように使い分けています

・A口座…住居費,光熱費,保険代,クレジットカード利用分等の引落し
・B口座…毎月一定額を貯蓄として入金。原則として引出しはしない。
・C口座…毎月一定額を投資用の原資として入金。筆者の場合はここから株式投資・投資信託を行っている。また,株の配当金などもこの口座に入金されるよう設定。

2 複数管理で得られる効果

このように分けて管理することでお金の使い途が明確となり,無駄な支出を抑えることができるようになります。ただし,前提として,ご自身の世帯の月単位の収支を把握して,きちんと予算組みをすることが必要です。

また,予算を組んで必要な生活費を把握しますので,現金として必要な分はまとめて引き出しておきます。ですから,ATM手数料が度々かかってしまうことも避けられます。

なお,筆者の知人の中には,もっと用途を細分化して複数の口座で管理をしている方もいますが,あまりに口座が多数になるとかえって管理が手間になるということも考えられます。その辺は,ご自身の性格(細かい管理が性に合う/面倒くさがりなど)を考えながら管理してみるとよいでしょう。

細かい支出を抑える

まずは比較的に取り組むことが容易なところから,節約を始めてみましょう。

「自炊をして食費を節約」「節電・節水をして光熱費を抑えた」などは,すぐに思いつく家計改善の方法として比較的容易に実践することができるのではないでしょうか。ただし,前述したとおり,いきなり大きな節約を目指すのは無理を強いて長続きしなくなるおそれがありますから,少しずつ確実に,できることから積み上げていきましょう。

また,「格安SIM」の普及により,携帯電話のキャリアや料金プランの選択肢が増えましたから,通信費の見直しをすることでも,支出削減による家計改善につながることでしょう。

ポイントキャンペーン,キャッシュバックなどに踊らされない

1 買い物前に冷静な判断を

真に必要なもの,そうでないものを冷静に判断し,そのうえで買い物をするようにしましょう。

「ポイント還元率UP」
「キャッシュバック」

こういった言葉につられて,ついつい予定していなかった買い物をしてしまった,という経験のある方は少なくないのではないでしょうか。
たしかに,真に必要なものであれば,そういった期間限定の時期にあわせてお得に購入することはよいことです。ですが,真に必要ないものの買い物であれば,それは無駄遣いにすぎません。魅力的な言葉にひかれず,購入前に冷静・批判的な立場からじっくり考察することも必要でしょう。

2 ふるさと納税

同じようなことが言えるのが,【ふるさと納税】です。

地方へ寄付をしてその寄付金をもとに自治体の財政状況を好転させ,寄付に対するお礼としてその自治体の特産品が返礼されるという,制度としては非常によくできた制度です。寄付者は,寄付金を税額控除できるため節税となり,その節税分とお礼の品の値段を考慮すると,破格の値段で地方の特産物を購入できたのと同視できる,という仕組みです。

ですが,冷静に考えてみて下さい。

そのお礼の品が,日常生活においても必要で購入するものであれば格安で購入できたことになるのでよいのですが,もし必要のないものなのであれば,それは単なる無駄遣いになってしまいます。
この制度は,その辺を考えて利用する必要があります。

保険の見直し

保障内容をじっくりと検討せずに保険に加入し,そのまま高額な保険料を支払っている場合,保険の保障内容を見直すことで保険料を節約できることがあります。
FPとして家計の相談を受けていると多いのが,

「どんな保険を選んだらいいのかよく分からない」
「保険証券に書いてあることがいまいち分からない」

というお声です。
そこで,ここでは「保険料」について,その見直しのポイントと,その前提となる保険の内容について解説します。いまご加入中の保険の見直しを考えている方,これから新たに保険への加入を検討している方,いずれにも共通するポイントをみていきます。

ポイントをおさえて,ご自身にあわせた保障を備えつつ,賢く保険料をおさえましょう。

1 保険の契約内容について

保険の新規加入,保険の見直しを検討する前提として,保険契約の内容として,以下の3つの項目を理解しておくことが重要です。すでに保険にご加入中の方は,保険証券にこれらの記載がありますので確認してみましょう。

 ① 保険の種類
 ② 保障内容
 ③ 保険期間・支払期間

① 保険の種類
ひとえに「保険」といっても,その種類は,医療保険やがん保険などの一般的なものから,貯蓄性の性質が強くなる学資保険,養老保険,個人年金保険など様々です。
医療保険に死亡保障がついているものや,医療保険にがん特約がついているものなど,「主契約」と「特約」に分かれていたりなど,保険会社の中でもたくさんの種類があります。

② 保障内容
いつ・どんなときに・いくらの保障がされるのか,という部分です。
基本的には,この保障内容によって保険料が変わってきます。つまり,保障を厚くすれば,その分だけ保険料が高くなるということが言えます。

③ 保険期間・支払期間
・保険期間…保険会社が責任を負う期間をいいます。つまり,契約者からみれば,保障が一生涯続く「終身保険」なのか,〇〇歳までの保障という「定期保険」なのかです。保障が一生涯続く分,終身保険のほうが保険料が高く設定されていることが多いです。

・支払期間…契約者がいつまで保険料を支払うか,ということです。上記の「保険期間」とは一致しないことがあります。

2 保険見直しのポイント

保険見直しのポイントとしては,不必要な保障をつけずに,保険料を抑えることが肝心ということです。保険の種類によるメリット・デメリットもあるのですが,ここでは「保障内容」に注目して解説していきます。
筆者が依頼者の方々の保険証券を拝見し,その方の生活態様(家族構成など)をうかがっていて感じるのは,多くの方の保険(保障)が,「過剰保障」になっているということです。

また,「なぜこの保障内容にしたのか?」とお尋ねすると,

 「たくさん保障されているほうが安心だから」
 や
 「貯蓄性もあれば損しないから」

というお言葉を非常によく聞きます。
ですが,保険というものは,本来は,①怪我や病気などで働けなくなった場合の稼得能力の低下を補うことや,②不幸にも亡くなった場合に遺族が困らないように備えておく,というところに目的があります。
ここでみなさんが忘れがちなのが,怪我・病気・死亡による稼得能力低下の場合,健康保険や公的年金による給付を受けられるケースも多いということです。

ですから,保険の保障内容(金額)を決めるにあたっては,健康保険や公的年金からの給付だけでは不足するであろう分(金額)を計算してから決めることが大切なのです。残念ながら,この辺りを考慮せずに過剰に保障をつけている(高い保険料を支払っている)ケースが散見されるのです。

いくつか簡単な参考例を挙げます。

<参考例1>独身・1人暮らしの場合(扶養家族がいない場合)

この場合,仮に死亡した場合でも,その後の遺族の生活を心配する必要がありませんから,死亡保障をつける必要性が低くなります。

<参考例2>既婚・妻子がいる場合(扶養家族がいる場合)

この場合には,<参考例1>とは逆に,一家の大黒柱に万が一のことがあった場合には世帯の稼得能力が大きく下がり,その後の遺族の生活が困窮してしまわないように,向こう数年の遺族の生活費を考慮した備えが必要になります。遺族年金では賄いきれない分の死亡保障をつけることが望ましいでしょう。

【発展編】余剰資金があれば投資をして資産形成を

投資をして資産形成

Asset formation by investment

不足の事態に備えて最低限の貯蓄は必要だとしても,安定した老後生活を送るための資産形成の方法として,「投資」をすることをおススメします。

「投資」と聞くと,「リスクがあって損をしてしまうのではないか・・・」「だったら銀行に預けておいたほうが安心だ」と投資に対してネガティブなイメージをお持ちの方も多いと思います。たしかに,投資にはリスクも伴いますので,その意味では間違っていません。しかし,だからと言って,この超低金利時代において,銀行に預けたままでお金を眠らせておくだけではもったいないとも言えます。

「お金にも働いてもらう」というイメージを持つことが重要なのです。

一般的に,日本人は欧米諸国の人と比較すると金融リテラシーが低く,欧米諸国の人は日本人の何倍もの資産形成をすると言われています。
つまり,資産運用の方法をあまりよく知らない日本人が多いのです。

その原因は諸説あるのですが,日本ではお金に関する教育の機会がほとんどなく,親やもっと前の世代から,「働いて・家をもって・貯金をする」といのが正しい資産形成だとする風習が根強く残っていることもその一因であるといわれています(もちろん,その考えが間違いであるとまではいいません)。
しかし,資産運用の方法の知・不知によって,数年後の資産の額に大きな差が生まれることもまた事実なのです。

ここで,日本人と欧米諸国との金融リテラシーの違いがよく分かるとあるデータ(※日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」)を紹介します。

家計に占める「現金・預金」の割合

  • 日本・・・・・・・52.5%
  • アメリカ・・・・・13.1%
  • ユーロエリア・・・33.0%

日本だけが圧倒的に高い数字ですね。いかに日本においては預金が重視されているか,預金こそ資産だという考え方が分かります。

家計に占める「投資商品」の割合

  • 日本・・・・・・・16.2%
  • アメリカ・・・・・53.9%
  • ユーロエリア・・・31.3%

これは,債権証券,投資信託,株式等といった運用資産(投資商品)の割合を示していますが,日本が圧倒的に低い割合であることが分かります。

ここで,もう1つ数字の比較をご紹介します。

現状の日本では,各金融機関の定期預金の金利が平均で0.02%,一方で,アメリカの国債の金利が2.5%程度です。
この金利を参考に,仮に20年間毎月1万円ずつ積み立てて,これらの金利で複利運用をした場合,最終的にどのくらいの差が出ると思いますか?

注:ここでは,「年金終価係数」(※)を用いて計算します。
(※:一定期間,一定額を積み立てながら一定の利率で複利運用した場合,将来いくらになるかを求める係数)

0.02%での運用の場合 2,404,560円

2.5%での運用の場合  3,065,400円  その差,約66万円

なんと,20年間で約66万円もの差がでるのです。もちろんこれは,毎月の積立額を増やせば,もっと差が大きくなります。

これが,「お金にも働いてもらう」ということの1つです。
資産運用の知・不知によって,こんなにも大きな差が生まれるのです。
だからこそ,筆者としては,お金を単に銀行に眠らせておくだけではなく,資産運用としての「投資」をおススメするのです。

ただし,ここで改めて注意しておきたいのが,投資はリスクが伴うもので,場合によっては投入した資金よりも戻りが少なくなってしまう可能性もゼロではないということです。ですから,投資をする資金は,不測の事態に備えた貯蓄とは別の,余剰がある分で行うことが望ましいのです。

また,「投資」をするうえで念頭においていただきたい考えとして,「長期・積立・分散」という考えがあります。資産評価の一時的な上昇・下降に一喜一憂するのではなく,コツコツ続けるという姿勢を持ち続けて下さい。

なお,先述のアメリカ国債の金利はあくまで参考の数字ですので,資産運用のためにアメリカ国債の購入を推奨している訳ではありませんのでご注意下さい

 

筆者がおススメする3つの投資方法

筆者がおススメする投資方法をいくつかご紹介します。

① iDeCo(イデコ)

確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度。
自分で掛け金・運用方法選択し,掛け金と運用益の合計額を将来給付として受け取れる。
投資に関する多少の知識は必要ですが,短期間での株式投資と異なって,原則しては長期運用が前提となるため,日々の株価の上限などを気にしなくてもいい。投資にあまり時間をかけられない方,投資の初心者にはおススメ。

<メリット>
①掛金全額が所得控除の対象となるため,「所得税」と「住民税」が軽減される。
(例:年収650万円・毎月の掛金が2万3000円の場合,1年で約8万2000円(20年だと約165万円)の節税

②運用益が非課税。
(投資信託などの運用の場合,通常は運用益に対して20.315%の税金がかかります)

<デメリット>
①原則として60歳以降まで引き出せない。
②掛金の限度額が決まっている(職業や勤務先に企業年金制度があるかで異なる)
③運用リスクは自分で負うことになる。

※iDeCo公式サイト … https://www.ideco-koushiki.jp/

② NISA(ニーサ)/つみたてNISA

次におススメするのが,「NISA」や「つみたてNISA」です。

これ自体は投資の種類ではなく,投資をするための「箱」のようなものとイメージして下さい。
投資による運用で利益がでると通常はその利益に対して税金がかかるのですが,このNISAの「箱」に入っている分(注:上限あり)は税金がかからないのです。両者のざっくりとした違いとしては,NISAが株式投資用の箱,つみたてNISAは投資信託用の箱といった感じです。
なお,両者は併用することができませんので,どちらか一方を選択する必要があります。

NISAは積極的に投資を行う人が使うのに適しているので中・上級者向け,つみたてNISAはこつこつと長期間投資することに適しているので初級者向けです。
せっかく投資をするのであれば,節税のためにも使わない手はないですね。

③ ロボアドバイザー

最後にご紹介するのは,「ロボアドバイザー」という方法で,「投資には興味があるけど,何をどうしたらいいのかさっぱり分からない」という投資初心者におススメです。

株式投資や投資信託の場合,通常は自分で投資する銘柄を決めたり,資産のバランスを自分で整えたり(リバランス)といったことがあるため,ある程度は投資に関する知識を身に付けたり,投資のための時間を確保する必要があります。このため,「なんか難しそう・・」「知らないといろいろ損をしそう・・・」というイメージが先行して,なかなか投資を始める踏ん切りがつかない人も多いのではないでしょうか。

この「ロボアドバイザー」では,AIが,簡単な質問に答えることでAIがリスク許容度を計算してくれたり,自分で決めた積立額を分散して投資してくれます。さらに,投資内容のバランス(ポートフォリオ)を一定周期で整えてくれるということまでやってくれるものが多いのです。また,1万円程度の少額の積立から始められるところもあるので,リスクが心配な投資初心者でも安心して投資を始められるのではないでしょうか。

もっとも,自分で投資信託をやる場合などと比較すると,手数料が若干高めであることには留意が必要です。

最後に

いかがでしたでしょうか。
安定した老後生活を送るためには,コツコツと努力の積み重ねが必要であることをご理解いただけたのではないでしょう。

「老後破産」といったことにならないように今からでも少しずつ対策を練っていき,この記事がその対策のためのお手伝いに少しでもなれたら幸いです。