離婚するときの親権者の決め方とは?裁判所の判断基準もかんたん解説

子供の前で喧嘩する父母
疑問女性1

夫と離婚協議中だけど、どちらが子の親権を持つかで話がまとまりません!どうしたら良い?

考える男性(少し筋肉質)

裁判所で離婚調停中です。親権者はどういう基準で決まるの?

親権者が話し合いでは決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てることになります。
裁判所が親権者を決める場合は、さまざまな事情が考慮され、一定の判断基準があります。

ここでは、親権者の決め方裁判所の判断基準を中心に解説します。

親権とは何か?

親権とは、子の利益のために、未成年の子を監護し、教育し、その財産を管理する権利と義務の総称です。
「監護」とは、監督・保護することで、簡単に言うと「面倒をみる」ことです。

大切なことは、親権は決して子を支配する権利ではないということです。
あくまでも、子の利益のために、親権者が行使できる権利であり、子の利益のために行使すべき義務や責任でもあるのです。

親権は、「身上監護権」「財産管理権」に分けられます。

民法 第820条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

親権の内容

身上監護権

身上監護権の具体的な内容は、次のとおりです。
いずれも子を支配するための権利ではなく、子の利益のために行使されなければなりません。

  • 居所指定権
  • 懲戒権
  • 職業許可権

居所指定権

親権者は、子の居所を指定することができます。
「居所」とは、「住所」に近い意味でもありますが、生活の中心になるような場所のことです。

民法 第821条
子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

懲戒権

「懲戒」とは、子が悪い行いをしたときに、これを正すため、厳しく説教するなどの一定の制裁を加えることです。
ただし、度を越えた体罰や、虐待は当然許されるものではありません。

民法 第822
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

職業許可権

親権者は、未成年の子が職業に就くことについて、許可を与えたり、その許可を取り消したり、制限したりすることができます。

民法 第823条 
子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、またはこれを制限することができる。

親権の内容

財産管理権

親権者は、子の利益のために、子の財産を管理したり、財産に関する契約などを代理したりすることができます。
例えば、子の預金通帳を預かったり、子の代理人として、携帯電話を購入したり、アパートの賃貸借契約を結んだりすることができるということです。

民法 第824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

離婚したときの親権者の決め方

離婚協議と子供父母が婚姻中は、その双方が子の親権者となります。
父母が離婚する場合は、どちらか一方を親権者と定めなければなりません。
親権者の決め方には、次の方法があります。

  • 父母の協議
  • 家庭裁判所での調停・審判
  • 裁判

離婚したときの親権者の決め方

父母の協議

協議離婚をする場合は、父母の協議によって親権者を決めて、離婚届に記載しなければなりません。
親権者の記載がなければ、離婚届は受理されません。

離婚したときの親権者の決め方

家庭裁判所での調停・審判

協議によって親権者が決まらない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)の申立てをします。
調停とは、裁判官や調停委員を介した話し合いの手続きですが、それでも親権者が決まらない場合は、離婚についての調停のみを成立させて、親権者については、家庭裁判所の審判によって決まります。

離婚したときの親権者の決め方

裁判

離婚調停そのものが不成立となってしまった場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。
その場合、裁判所があらゆる事情を考慮して、判決によって親権者を決めます。

民法 第818条
(中略)
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

民法 第819条
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
(中略)
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
(中略)

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

赤ちゃんとハンマー裁判所が親権者を決めるときは、次のような事情が考慮されます。

【父母の事情】

  • 監護の実績・継続性
  • 子の出生時からの主たる監護者であったかどうか
  • 監護開始における違法性の有無
  • 面会交流の許容性(寛容性)
  • 監護能力(監護者としての適格性)
  • 経済力
  • 子との情緒的結びつき
  • 愛情
  • 居住環境、保育・教育環境
  • 親族などの援助の有無

【子の事情】

  • 子の意思
  • 兄弟姉妹との関係(兄弟姉妹と離ればなれにすべきかどうか)
  • 年齢
  • 心身の発育状況
  • 父母との情緒的結びつき
  • 現在の監護環境への適応状況
  • 環境の変化への適応性

この中でも、特に、次のような事情が重視される傾向にあります。

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

監護の実績・継続性

子の生活環境をなるべく変えないことで、子の精神的安定がもたらされます。

そのため、これまでの監護の実績を考慮し、現在の監護者・監護状況を変えないことは、子の健やかな成長をもたらすものとして重視されています。

例えば、次のような事例があります。

最高裁判所 平成24年6月28日
夫婦と長男(8歳)、二男(6歳)は、夫の実家で暮らしており、主に妻が子2人の監護をしていた。その後、夫の不貞疑惑が原因で、妻はひとりで実家に戻り、子2人の監護者指定と引き渡しを請求した。
長男は父との同居、二男は母との同居を望んでいたが、特別にどちらかと仲が悪いというわけではなかった。
以上のような事案において、裁判所は、現状の監護状況に問題があるわけではないなどの理由から、妻の請求を退けた。

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

子の出生時からの主たる監護者であったかどうか

乳幼児期における主な監護者による監護を継続することは、子の情緒的成長にとって重要であるという考え方から、子の出生時からの主たる監護者を親権者に指定しようとする傾向もあります。

例えば、現在は父が単独で子を監護しており、その状況が数年続いている場合であっても、乳幼児期における主たる監護者が母であった場合は、母が親権者に指定されるということです。

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

監護開始における違法性の有無

子を無断で連れ去ったり、面会交流で引き渡された子を返さなかったり、暴力によって子を奪ったりするなど、違法に子を奪うようなことは許される行為ではありません。
場合によっては、未成年者略取罪や未成年者誘拐罪といった犯罪に当たる可能性もあります。

そのため、そのような行為により始まった監護は、監護の実績や継続性とは評価されず、逆に、監護者としての適格性に問題があるとして、マイナスの評価をされます。

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

面会交流の許容性・寛容性

子と他方の親との面会交流を認めることができるか、他方の親に対して寛容になれるかという点も、親権者としての適格性の判断基準となります。これは、フレンドリーペアレント・ルールとも呼ばれます。

夫婦が離婚すれば、お互いに負の感情を抱いてしまうこともあるでしょう。しかし、子との関係で見れば、夫婦ではなく父母なのです。その関係は、一生変わることはありません。

子に対して他方の親のことを悪く言うばかりでなく、肯定的に伝えていくことが大切なのです。
なぜなら、子と他方の親との関係を良好に保つことが、子の精神安定をもたらし、人格形成にも良く働くからです。

裁判所が親権者を決めるときの判断基準

子の意思

親権者を決める際には、子の意思や希望を尊重しなければなりません。

特に、子が満15歳以上の場合は、家庭裁判所が親権者や監護者の指定の裁判をするときに、子の陳述を聴かなければなりません。

満15歳未満であっても、おおむね10歳前後以上であれば、意思能力があるとされますので、子の意思を十分に考慮する必要があります。

親権者はいったん決めたら変更できない?

親権者を決めて離婚が成立した後でも、親権者を変更することは可能です。

ただし、家庭裁判所に親権者変更の調停を申立てる必要があり、父母の協議だけでは変更できません。
父母だけでなく、子の親族(祖父母、おじ・おば等)も申立てることができます。

親権者変更についても、子の意思・希望や現状の継続性などが重要な判断基準になっています。

民法 第819条
(中略)
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

離婚のことなら弁護士に相談しよう

養育費や婚姻費用を請求したい、子供の親権を獲得したい、慰謝料を請求したいなど、離婚に関するお悩みは弁護士に相談しましょう。

自ら相手方と協議をすることもできますが、多くの負担が伴うだけでなく、結果的に得られる金額などで損をする可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとしては、主に次の3点があります。

  1. 慰謝料や財産分与を増額できる場合がある
  2. 相手方と話すストレスを軽減できる
  3. 書類作成や裁判手続などを任せることができる

弁護士に依頼するメリット

慰謝料や財産分与を増額できる場合がある

弁護士が慰謝料や財産分与を請求する場合、財産の状況や夫婦のさまざまな事情、過去の判例などを参考にして、適正な分与額を算出します。

一方、自分で請求する場合、そもそも適正な金額がわからないことに加えて、なるべく早く決着させたいという心理から、相手方が払いやすい不当に低い金額で妥協してしまう恐れがあります。

このような事態を防ぐためにも、弁護士に相談して適正な金額を計算してもらいましょう。そうすることで、自分ひとりで請求する場合よりも慰謝料や財産分与を増額できる可能性があるのです。

弁護士に依頼するメリット

相手方と話すストレスを軽減できる

離婚しようとしている相手、離婚した相手と直接話すことには、強いストレスや不安を感じるのではないでしょうか。

その点、第三者である弁護士が間に入ることで、直接話し合うことはほとんどなくなりますので、ストレスも大幅に軽減できます。

その結果、離婚の条件について、冷静に検討し判断することができるでしょう。

弁護士に依頼するメリット

書類作成や裁判手続などを任せることができる

例えば、慰謝料や財産分与を請求する内容証明郵便を送付したり、裁判所に調停の申立てをしたりするには、書類収集や書類作成という手間がかかります。

また、専門的な知識が求められる書類ですので、自分で作成すると間違いなどの不備が発生する恐れもあります。

弁護士に依頼すれば、そのような手間を省き、間違いを犯すリスクを少なくすることができます。

離婚でお困りの場合は、法律事務所MIRAIOにご相談ください!