養育費は強制執行で回収!公正証書などの「債務名義」についても解説

公正証書

養育費について、調停や公正証書で取り決めを行ったにもかかわらず、相手が養育費を支払ってくれずお困りだという方がいらっしゃると思います。
養育費の支払いは、子に対する親の義務であるため、取り決めに従わなかった場合、強制執行によって、養育費支払い義務者の給料や財産を差し押さえ、未払の養育費を回収できる可能性があります。

この記事では、強制執行手続きの方法や、差し押さえることができる債権の範囲などについてご紹介していきます。
この記事を最後まで読めば、「義務者が養育費を払ってくれない!」とお悩みの方も、解決方法が分かるでしょう。

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目次

強制執行をするには、公正証書などの「債務名義」が必要

原則として、財産の差し押さえ等の強制執行手続きを行うには「債務名義」が必要になります。
債務名義とは、確定した請求権、債権者、債務者、債務の範囲などを公的に証明する文書のことを言います。
代表的な債務名義は、判決書きや和解調書ですが、公正証書や調停調書、審判調書も債務名義としての役割を果たすことがあります。
なお、養育費請求について強制執行手続きを行う場合は、以下のような文書を債務名義とすることが多いようです。

・養育費に関して取り決めた執行認諾文言付き公正証書
・養育費についての調停が成立した場合に作成される調停調書
・養育費について裁判所が裁定を下した審判調書

養育費の強制執行は2種類の方法がある

取り決められた養育費の支払いを相手が拒み続けた場合、強制執行を行い、払われるべき養育費を回収することができます。
養育費の強制執行には、次の2つの執行方法があります。

① 直接強制(差し押さえ)

直接強制とは、いわゆる「差し押さえ」のことです。払い義務者の給与債権や預貯金債権などの財産を差し押さえ、強制的に債権の回収を行う執行方法です。養育費について強制執行を行う場合、基本的には直接強制による強制執行が選択されます。

② 間接強制

間接強制と、は、期日までに養育費を支払わなかった場合に、養育費とは別に「間接強制金」を課すことを警告することで、義務者に心理的圧迫をかけることにより自発的な支払を促す執行方法です。間接強制で支払われた「間接強制金」は申立人が受け取ります。
原則として、金銭債務については、間接強制の手続きをとることはできませんが、養育費や婚姻費用の分担金など、扶養に関する権利については、間接強制による強制執行を行うことができる場合があります。ただし、義務者に支払い能力がなく養育費を支払うことができない場合などでは、間接強制の決定がされないこともあります。

~法改正により、財産開示手続きが可能に~
養育費の未払いなどで強制執行を行う場合、義務者の財産を特定しなければならないというルールがあります。しかし、この財産の特定が困難な場合があり、未払いが発生しても強制執行を行うことができず、結局は養育費の回収ができないケースが多くありました。
2020年4月に民事執行法が改正され、「第三者からの情報取得手続き」という制度が設けられ、裁判所を介して銀行などの第三者に財産開示を求めることができるようになりました。これにより、以前は義務者が財産開示を拒み、強制執行ができなかったようなケースでも、強制執行を行えるようになりました。

強制執行以外に未払い養育費を支払ってもらう方法

養育費請求調停や審判で取り決めを行った養育費を相手が支払ってくれない場合、最終的には「強制執行」で差し押さえを行いますが、その前の段階として、「履行勧告」や「履行命令」を申し立て、義務者の支払いを促す対処方法があります。
いきなり強制執行を行うことに躊躇いを感じている場合などは、まずは履行勧告を行い、自発的な支払いを行うよう促してみましょう。

① 履行勧告

履行勧告とは、家庭裁判所から義務者に対し、「取り決めた通りに支払いを実行するよう」注意をしてもらう制度です。
裁判所からの注意を受けることで、義務違反を自覚し、支払いへの意識改善が行われることを目的とします。
罰則や法的な拘束力はないため、履行勧告を受けても、支払いを行わないケースも珍しくありません。

② 履行命令

履行命令とは、家庭裁判所から相手に「取り決めた通りに支払いを実行しなさい。実行しなければ、過料に処す可能性があります。」と実行を命令してもらう制度です。
履行命令に従わなかった場合、義務者は10万円以下の過料に処される可能性が有ります。
ただし、実際に過料に処されるケースは少なく、履行命令を受けても支払いを実行しないケースもあります。

強制執行の対象に出来ない財産がある

強制執行では、給与債権や預貯金債権以外にも、土地や建物などの不動産、骨とう品などの動産についても差し押さえを行うことができますが、義務者の生活に欠くことのできない財産(衣服、寝具、1カ月分の食料など)は「差押禁止財産」といして、強制執行の対象外となります。
なお、不動産や動産の場合、現金化するまでに時間がかかってしまうため、養育費について強制執行を行う場合、基本的には給与債権や預貯金債権の差し押さえを行います。

① 差押禁止動産

・債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具など
・債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料
・現金66万円まで(債務者等生活費2か月分として政令で定められた金額)
・債務者の職業に応じて、その業務に欠くことのできない器具その他の物
・実印その他の印で職業又は生活に必要なもの
・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に必要な物
・債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿など
・債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
・債務者等の学校等における学習に必要な書類及び器具
・発明又は著作に係る物で、未公表のもの
・債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
・建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

② 差押禁止債権

・給料、賃金、俸給、退職年金、賞与(ボーナス)、退職金など
給料などの債権は、原則として手取り金額の4分の3相当が差押禁止財産です。ただし養育費などの扶養義務に関する定期金債権については、手取り金額の2分の1が差し押さえ禁止財産となります。

・年金など
国民年金・厚生年金などの各種年金の受給権
生活保護受給権
児童手当受給権 など

直接強制を行う場合、「給料」の差し押さえが効果的

直接強制を行う場合、差し押さえの対象とする財産によって、手続きの煩雑さが異なります。一度の手続きで効率よく債権の回収を行いたい場合、給与債権を差し押さえることが効果的です。

① 預貯金口座を差し押さえる場合、手間がかかる可能性がある

預貯金口座に対して差し押さえを行う場合、一度の差し押さえ手続きで差し押さえられる金額は、当該差し押さえを行った時点における口座内預金が上限となります。また、来分の養育費については差し押さえることができません。

② 効果的なのは「給料」の差し押さえ

養育費について義務者の財産の差し押さえを行う場合、義務者の給与債権を差し押さえることが効果的です。
給与債権の差し押さえを行う場合、次のようなメリットがあります。

・一度の手続きで、将来分についても差し押さえができる
・原則として手取り金額の1/2までの金額の給与債権を差し押さえることができる 
(月の手取り金額が66万円以上の場合、33万円を引いた残額を差し押さえることができます。)
・義務者の勤務先から直接振り込みを受けることができる

強制執行の手続きの流れと必要書類

強制執行は裁判所を通じた手続きであるため、予め準備をしておく必要があります。

① 必要書類を集める

裁判所に行く前に必要書類の収集を行います。

債務名義

債務名義とは、義務者に対する債権がある事を証明する書面のことをいいます。
債務名義については前述のとおりです。

送達証明書

送達証明書とは、債務名義が相手に到達していることを証明する書面です。

当事者の住民票・戸籍謄本

債務名義に記載された当事者の住所と現在の住所が異なる場合や、氏名が異なる場合に必要になります。

法人の資格証明書(法人の登記事項証明書または代表者事項証明書)

第三債務者(相手の勤務先等)が株式会社などの法人の場合に必要になります。

② 申立書を作成する

次の内容を記載した「申立書」を作成します。
申立書の書式ダウンロード作成に関する注意点裁判所ホームページからご確認ください。

・表紙
・当事者目録
・請求債権目録
・差し押さえ債権目録

③ 地方裁判所に申し立てを行う

必要書類と申立書が準備できたら、「義務者の住所地」を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。

④ 裁判官が債権差押命令を発令する

提出した書類に不備が無ければ、裁判官が債権差押命令を発令します。
この時、「債権差押命令正本」が義務者の勤務先や金融機関(第三債務者)に送付されます。

⑤ 義務者に「債権差押命令正本」が送付される

第三債務者へ「債権差押命令正本」が送付されてから、義務者に「債権差押命令正本」が送付されます。

⑥ 申立人に「債権差押命令正本」が送付される

申し立てを受けた地方裁判所が、義務者に通知してから1週間が経過すると、申立人のもとに「債権差押命令正本」が送付されます。
申立人に「債権差押命令正本」が送付されると、第三債務者から直接の取り立てが可能となります。

⑦ 第三債務者に取り立てを行う

第三債務者への取り立てについて、裁判所は介入しないため、申立人自身が第三債務者に取り立てを行います。

⑧ 裁判所に取立届を提出する

第三債務者から支払いを受けたら、取立届を裁判所に提出します。
なお、取立届は支払いの都度、提出する必要があります。

強制執行を行っても回収できない可能性があることに注意

義務者が取り決め通りに養育費の支払いを行わず、強制執行を行ったとしても、義務者に払い能力が無い場合、必要な金額を回収することが困難となる可能性があります。

養育費の強制執行で困ったら弁護士に相談しよう

養育費の強制執行は、申立書の作成や義務者の情報の確認が必要となり、時間や手間がかかります。
また、義務者への強制執行を検討している場面では、離婚調停を希望していたり、親権についてトラブルを抱えていたりと、養育費以外にもお悩みを抱えているケースが珍しくありません。
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交渉や訴訟の代理人になってもらえる

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