慰謝料が認められる離婚理由とは?具体的なケースごとに詳しく解説します

離婚したら、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料を請求できるかどうかは、離婚の理由と、その原因が相手方にあるかどうかによって決まります。

ここでは、慰謝料が請求できる離婚理由(離婚原因)を、具体的なケースを明らかにしながら解説していきます。
これを読んで、あなたの場合は慰謝料が請求できるかどうか確認していきましょう。

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離婚の慰謝料とは?

慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
離婚に伴う慰謝料は、相手方の行為そのものや、それによって離婚に至ってしまったことによって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。

それでは、相手方のどのような行為であれば、慰謝料が認められるのでしょうか。
次の章で具体的に見ていきましょう。

慰謝料が認められる離婚理由

相手方に次のような行為があり、それが原因で離婚に至ってしまった場合には、相手方配偶者などに慰謝料を請求することができます。

  • 不貞行為(浮気)
  • DV(暴力)
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく生活費を入れない、同居しない)
  • セックスレス・性の不一致
  • モラハラ(モラル・ハラスメント)
  • 過度の借金・浪費

慰謝料が認められる離婚理由①

不貞行為(浮気)

浮気不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことです。
性的関係とは、性的な肉体関係のことです。キスをしただけとか、肩を抱いただけでは不貞行為にはなりません。また、互いに好意をもって交際していても、肉体関係がなければ、不貞行為にはなりません。
自由な意思に基づいて、性的関係を結ぶことが必要ですので、無理やりレイプされた場合には不貞行為にはなりません。
相手は異性だけでなく、同性との肉体関係も不貞行為になる可能性があります。
慰謝料は、不貞行為をした配偶者に対してだけでなく、配偶者の浮気相手にも請求できます。ただし、配偶者に対する慰謝料請求とは、時効の起算日が異なりますので注意が必要です。慰謝料請求の時効については、次の記事をご参照ください。

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夫婦関係が破綻した後の不貞行為

離婚が成立しておらず、形式的にはまだ夫婦であっても、長年別居しているなど、実質的には夫婦関係が破綻しており、修復の可能性がないような場合には、配偶者以外の者と性的な肉体関係を結んでも不貞行為にはなりません。

不貞行為の事例

不貞行為で慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

東京高等裁判所 昭和55年9月29日
16年間の婚姻生活中、次から次へと数人の女性との不貞行為を繰り返していた夫に慰謝料300万円の支払いが命じられた。
横浜地方裁判所 昭和61年12月25日
妻が夫の浮気相手である女性に1000万円の慰謝料を請求したが、浮気関係は夫が主導したものであり、夫が浮気相手のもとに走ったことにつき、妻に落ち度や責任がないかどうか疑義もあることなどから、150万円を相当とした。
東京地方裁判所 平成10年7月31日
10年以上夫と性的関係のない妻が、男性と知り合って4年後に性的関係を持ち、夫の抑止にもかかわらず男性と同棲するに至った事案で、男性から夫への慰謝料100万円が認められた。

慰謝料が認められる離婚理由②

DV(暴力)

ドメスティックバイオレンス配偶者からの暴力や虐待行為(DV=ドメスティック・バイオレンス)により、夫婦の共同生活ができず、その回復の見込みもなくなり、離婚に至った場合には慰謝料を請求できます。

男女共同参画局のホームページによると、次のような行為がDVに該当します。

  • 平手でうつ
  • 足でける
  • 身体を傷つける可能性のある物でなぐる
  • げんこつでなぐる
  • 刃物などの凶器をからだにつきつける
  • 髪をひっぱる
  • 首をしめる
  • 腕をねじる
  • 引きずりまわす
  • 物をなげつける

より詳しい事例は、次のページをご参照ください。
男女共同参画局「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは」

DV(暴力)の事例

DV(暴力)で慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

横浜地方裁判所 平成9年4月14日 
些細なことで殴る、蹴るなどの暴力をふるった夫に慰謝料400万円の支払いを命じた。
大阪家庭裁判所 昭和50年1月31日 審判
夫が収入を酒や女遊びに浪費し、妻に対しては毎日のように暴力をふるい、頭髪を引っ張る、手拳で殴打、足で蹴る、下駄で頭を殴ってかなりの裂傷を負わせる、出刃包丁で手指などを切りつける、蒔割りやスコップを振り上げて追いかけ回すなどした事案で、慰謝料500万円が認められた。別途、時価約1000万円の土地・建物の財産分与も認められた。
大阪高等裁判所 平成12年3月8日
夫のたびたびの暴力により、妻が右鎖骨骨折、腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負い、運動障害の後遺症が残った事案で、慰謝料350万円のほかに、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益として、合計1714万円の損害賠償が認められた

慰謝料が認められる離婚理由③

悪意の遺棄

協力義務違反民法には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。
この同居・協力・扶助の義務に反する、次のような行為が「遺棄」に当たります。

  • 正当な理由なく、一方的に別居を強行すること
  • 十分な収入があるにもかかわらず、家に生活費を一切入れないこと

相手方のこのような行為の結果、夫婦関係が破綻し離婚に至った場合には、慰謝料を請求できます。

悪意の遺棄の事例

悪意の遺棄で慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

大阪地方裁判所 平成6年10月28日
夫は妻が病気のときも家事を手伝わず、さらに妻とは寝室を共にせず、居間で寝起きするようになり、性的関係もなくなり、10カ月の家庭内別居と2年4か月の別居期間を経て離婚した。妻は4歳と5歳の子の面倒を看ている。この事案では、夫に慰謝料60万円の支払いが命じられた。
東京地方裁判所 昭和56年9月16日
婚姻期間3年で、夫は仕事熱心で帰宅が遅く、夫婦の会話に時間を割かず、円満な家庭を築く夫の努力不足が破綻の原因とされ、夫に慰謝料100万円の支払いが命じられた。

慰謝料が認められる離婚理由④

セックスレス・性の不一致

セックスレス正当な理由がなく、性交を拒否し、それが原因で婚姻が破綻した場合には慰謝料が認められます。
また、夫が婚姻時に性交不能を告知せず、実際に3年6か月もの間、性交渉がなかったケースにおいて、「相手方に対し自己が性的不能であることを告知しないということは、信義則に照らし違法であり不法行為を構成すると解するのが相当である」として、夫に対して慰謝料200万円の支払いを命じられた事案もあります(京都地方裁判所 昭和62年5月12日)。

セックスレス・性の不一致の事例

セックスレス・性の不一致で慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

浦和地方裁判所 昭和60年9月10日
夫がポルノ雑誌に異常な関心を示して自慰行為に耽り、妻が性的関係を求めたのに拒否したことなどについて、夫に慰謝料500万円の支払いが命じられた。
岡山地方裁判所津山支部 平成3年3月29日
妻が婚姻当初から、男性に触れられるのが気持ち悪いと言って性交を拒否し続けた事案で、精神的な面で性交に耐えられないという医師の診断はあるものの、妻に対して慰謝料150万円の支払いが命じられた。

慰謝料が認められる離婚理由⑤

モラハラ(モラル・ハラスメント)

モラルハラスメントモラハラ(モラル・ハラスメント)とは、暴言、脅し、無視などといった言葉や態度などによって、相手の人格や尊厳を繰り返し執拗に傷つけることで、精神的暴力ともいわれ、DVのひとつにも分類されます。

男女共同参画局のホームページによると、次のような行為がモラハラに該当します。

  • 大声でどなる
  • 「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
  • 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
  • 何を言っても無視して口をきかない
  • 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
  • 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
  • 生活費を渡さない
  • 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
  • 子どもに危害を加えるといっておどす
  • なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす

モラハラと慰謝料については、次の記事もご参照ください。

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モラハラ(モラル・ハラスメント)の事例

モラハラで慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

大阪高等裁判所 平成28年7月21日
相手の不貞を疑って、厳しく問い詰めたり、所持品検査や行動の監視や詮索をしたりしたことが婚姻破綻の主な原因であるとし、慰謝料200万円が認められた。
東京高等裁判所 昭和54年1月29日
夫が妻の男性関係にあらぬ疑いをいだき、妻に家を出るよう強要して別居し、その後も離婚を求めて執拗に嫌がらせの電話や手紙を繰り返したり、妻の父母に対して言いがかりとしかいえない訴訟を提起したりした事案で、夫に対して慰謝料500万円の支払いが命じられた。

慰謝料が認められる離婚理由⑥

姑との不仲

嫁いびり姑(夫の母)から再三にわたって罵詈雑言を浴びせられ、やることなすこと一方的に非難され、それに対して夫は姑を諫めるどころか、姑に同調して妻を追い込み、その結果、妻が実家に帰ってしまった事案で、夫と姑の行為は「夫婦共同生活を破壊に導いたものとして不法行為の責任を免れない」として、慰謝料200万円が認められた事例があります(名古屋地方裁判所一宮支部 昭和53年5月26日)。

慰謝料が認められる離婚理由⑦

過度の借金・浪費

借金・浪費で慰謝料が認められた事例として、次のような裁判例があります。

神戸地方裁判所 平成2年6月19日
夫がゴルフやクラブ・バーなどで年間500~600万円浪費したうえに、不貞行為も重ねた事案で、慰謝料600万円が認められた。

性格の不一致だけでは離婚慰謝料は認められない

慰謝料は有責行為、つまり責められるべき不法行為を行った者に対して請求できますので、単なる性格の不一致で離婚したという場合には、お互いに慰謝料を請求することはできません。

離婚慰謝料を請求するなら弁護士に相談しよう

離婚慰謝料を請求したいときは、弁護士に相談、依頼するようにしましょう。
自分で相手方と交渉して、慰謝料を請求することもできますが、多くの負担が伴うだけでなく、結果的に慰謝料の金額で損をする可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとしては、主に次の3点があります。

  1. 慰謝料が増額できる場合がある
  2. 相手方と話すストレスを軽減できる
  3. 書類作成や裁判手続などを任せることができる

メリット①

慰謝料が増額できる場合がある

弁護士が慰謝料を請求する場合、夫婦のさまざまな事情や過去の判例などを参考にして、適正な金額を算出します。

一方、自分で慰謝料を請求する場合、そもそも適正な金額がわからないことに加えて、なるべく早く決着させたいという心理から、相手方が払いやすい不当に低い金額で妥協してしまう恐れがあります。

このような事態を防ぐためにも、弁護士に相談して適正な金額を計算してもらいましょう。そうすることで、自分ひとりで請求する場合よりも慰謝料が増額できる可能性があるのです。

メリット②

相手方と話すストレスを軽減できる

浮気やDVを繰り返す相手方と直接話すことには、強いストレスや不安を感じるのではないでしょうか。
その点、第三者である弁護士が間に入ることで、直接話し合うことはほとんどなくなりますので、ストレスも大幅に軽減できます。
その結果、慰謝料の条件について、冷静に検討し判断することができるでしょう。

メリット③

書類作成や裁判手続などを任せることができる

慰謝料を請求する内容証明郵便を送付したり、裁判所に調停の申立てをしたりするには、書類収集や書類作成という手間がかかります。
また、専門的な知識が求められる書類ですので、自分で作成すると間違いなどの不備が発生する恐れもあります。
弁護士に依頼すれば、そのような手間を省き、間違いを犯すリスクを少なくすることができます。

まとめ

慰謝料を請求できる離婚理由としては、次のようなものです。

  • 不貞行為(浮気)
  • DV(暴力)
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく生活費を入れない、同居しない)
  • セックスレス・性の不一致
  • モラハラ(モラル・ハラスメント)
  • 過度の借金・浪費

ただし、ケースバイケースでもありますので、まずは詳しい事情を弁護士に相談して、慰謝料が請求できる可能性があるのかどうかを確認しましょう。

慰謝料請求にお困りの場合は、迷わず、法律事務所MIRAIOにご相談ください!