シンプルに解説 「空き家の3000万円特別控除」ってどんな制度?

TAXと確定申告書

 相続等により取得した空き家(その敷地等を含む)を売却したときに3,000万円が控除される制度があると聞いたことはあるけど,具体的にどのような制度なのか,自分の場合はそれに当てはまるのか,ちょっと調べてみたけどよく分からない,などのお悩みを抱えていませんか?

ここでは,「空き家3,000万円特別控除」について,以下の4つにポイントをしぼってシンプルに解説します。
 ①  控除を受けることができる要件
 ②  控除を受けるための手続方法
 ③  控除を受けられる期間
 ④ どのくらい節税になるのか

 これらのポイントをご覧いただくことで,控除を受けられるのか,受けるためには実際に何をやったらいいのか,どのくらいの節税になるのかをご理解いたただけます。
 制度を理解して賢くこの制度を利用し,節税をしましょう。

不動産を売却することでかかる税金の金額

Income tax system

 

 

 

 まず,原則論としての税金の話です。
 不動産を売却して売却益(売却価格から取得費・経費などを差し引いて,それでもプラスになった部分)が出ると,税金(所得税等や住民税)がかかります。
 これは,空き家の売却であっても同様です。

 では,実際にどのくらいの税金がかかるのか,冒頭の図を参考にみてみましょう。
 税金の計算方法は細かくいえばいろいろと複雑なのですが,ここでは,長年住んでいた家を売却したケースを例として,所得税等と住民税で20.315%となるケースを考えてみます。「売却価格5,000万円-取得費・経費3,000万円=2,000万円」で,売却益2,000万円に20.315%の税金ですから,約406万円もの税金がかかってしまうのです。高いですよね。

 でも,「空き家3,000万円特別控除」が適用されると,このような税金が減るか,税金がかからないケースもあるのです。

~そもそも「空き家」とはどのような家を指すのか?~

 

「空き家」という言葉を調べてみると,国土交通省では,「約1年以上にわたって誰も使っていない家が空き家」という見解のようです。

その根拠としては,国土交通省では,「空家等対策の推進に関する特別措置法」(第2条1項)に準じて解釈をしていて,その内容は,「この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう」としています。さらに細かく内容を見ると,条文中の「常態」とは「おおむね年間を通して建築物の使用実績がないこと」としており,その使用実績については,人の出入りや水道・電気・ガスなどのメーターが動いているかで判断しているようです。

「1年以上経っていないと空き家とは言えないのか…」と特別控除の利用を諦めてしまいそうですが,国土交通省の見解の空き家と,特別控除で定める空き家とは,少し内容が異なりますので後ほど詳しく解説します。

「空き家3,000万円の特別控除」ってどんな制度?

お金に関する疑問

 この制度の最大の特徴(メリット)は,この特例が適用されると,不動産の売却によって出た利益(譲渡所得)から最大で3,000万円が控除されること,もっと言えば,売却益が3,000万円以内であれば税金が免除となることにあります。

 冒頭でみたケースで本特例が適用できた場合,売却益2,000万円に対してのその全額が控除対象となり,所得がゼロで税金がかからないということになります。適用がない場合には約406万円もの税金がかかるのに対してこれがゼロになるのですから,非常に節税効果が高い制度といえますね。

 この制度は,2016年に新設された制度で,正式名称を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。

 そして,元々はこの制度は2019年12月31日までが適用期限とされていましたが,2023年12月31日までに延長されました。延長されたとは言っても期限がありますので,期限経過で使えなくなってしまったとならないように,利用するかどうかを早めに判断する必要がありそうですね。

 もっとも,本特例は,適用されるための条件が厳しく,また,内容も複雑であるため,その点について次の項目からいよいよそのポイントを解説します。

ポイント①:控除を受けることができる要件

適用要件の概要

 適用要件に関する詳細は国税庁のホームページのタックスアンサーにものっていますが,これらの要件を大別すると,以下の3種類に分けることができます。

 A どんな建物が対象か
 B いつまでに売却する必要があるか
 C その他

このA~Cについて,さらに詳しくみていきます。

どのような建物が対象か(A)

① 昭和56年5月31日以前に建築された建物

 この特例の背景としては,古くて耐震性が低い空き家が増えるのを抑えようという目的があります。
 そして,昭和56年に建築基準法が改正されて,耐震基準がそれまでよりも厳しいものに見直されましたので,それよりも古い「旧耐震基準」の家を本特例の対象としたのです。

② 一定の耐震性がある建物であること or 建物を解体したうえでの売却であること

 前述のとおり,本特例は「旧耐震基準」の家を対象としていますが,その「旧耐震基準」の家をそのまま売却しても適用されません(被相続人の生前に,一定の耐震基準を満たすリフォームをしている場合を除く)。
 適用されるためには,
 a 一定の耐震基準を満たすようにリフォームしてから売却
 b 建物を解体して更地として売却
のいずれかにする必要があります。
 ちなみに,空き家の解体工事にかかる費用は,坪単価で20,000円~40,000円程度を言われています。ですから,40坪の土地であれば120万円前後の費用がかかることになりますね。

③ 区分所有建物ではないこと

 シンプルにいえば,「マンション」ではないことです。
 前述のように,耐震性が低い家の増加抑制が本特例の目的であるため,マンションは対象外です。

④ 亡くなった方(被相続人)のみが,亡くなる直前まで居住していた家であること

 この点については被相続人の方が老人ホームで亡くなった場合はどうなるのか?という疑問もあると思いますので,後述する「具体例」で詳しくみます。

いつまでに売却する必要があるか(B)

 本特例を受けるためには,「相続があった日から3年が経過した年の年末まで」に売却する必要があります。このため,例えば2017年の5月15日に相続が開始となった場合,2020年12月31日までに売却する必要があるのです。

その他(C)

① 本特例を受けるためには「相続があった日から3年が経過した年の年末まで」に売却する必要があるのですが,さらに,被相続人の生前から売却までの間に「被相続人以外に居住していた人がいなかった」ことも必要になります。
つまり,空き家にしておくのがもったいないからという理由で

・相続以降,相続人等の親族がその家に住んでいた
・誰かに賃貸して住まわせていた
・駐車場に変えて賃貸していた

などの場合は,適用が受けられなくなってしまいますので注意が必要です。
その他の要件として,以下の2つがあります。

② 売却価格が1億円以下であること
③ 親族など近しい人への売却ではないこと

ポイント②:控除を受けるための手続方法

控除を受けるための手続きの流れは,以下の通りです。

①  空き家の売却
   ↓
② 「被相続人居住用家屋等確認書」の申請
   ↓
③ 「被相続人居住用家屋等確認書」の交付
   ↓
④  確定申告(売却した翌年の2/163/15

 「空き家の3,000万円特別控除」の適用を受けるためには,譲渡(売却)した翌年2/16~3/15の間に確定申告をする必要があります。
 また,確定申告に先立って,あらかじめ空き家の所在地の市区町村に申請をして,「被相続人居住用家屋等確認書」(※)を取得し、申告書に添付する必要があります。各自治体によって多少の違いはあるようですが,申請の受付から確認書の交付までは,おおむね2週間程度の時間がかかるようです。

※…申請書は国土交通省のHPより入手可能。申請書に添付する書類としては,「被相続人の住民票(除票)」や「電気ガスの閉栓証明書」などがある。

ポイント③:控除を受けられる期間

 特別控除を受けるかどうかは,なるべく早く決断をする必要があります。

 それは,本特例が2023年12月末までの時限立法であるのと,相続があった日から3年が経過した年の年末までに売却する必要があるからです。

 とはいえ,その一方で,前述の3⑷にあるように,一時的にでも相続人が住んだり,事業用などで活用したりしてしまうと本特例が適用されなくなってしまうため,売却せずに(特別控除を受けずに)空き家を有効活用するかどうかを慎重に判断する必要もあります。

 特別控除を受けるために売却するか,売却をせずに有効活用するか,非常に難しい判断ですね。

 判断基準としては,事業用などとして活用するのであれば,活用した場合の収支をシミュレーションしてみてどのくらいの利益をもたらすのか,それを特別控除適用前と適用後の譲渡所得税額の差額を比較して検討することが肝要です。また,それは,空き家を新たに居住用として活用する場合でも同様のことが言え,節約できる住居費と特別控除適用前と適用後の譲渡所得税額の差額を比較する,ということになります。

 活用によって得られる利益のほうが大きいようであれば売却を(特別控除の適用を)思いとどまったほうがよいですが,事業収支のシミュレーションなどは自分で計算するのは難しいところだと思います。そのようなときは,税理士などの専門家や,ファイナンシャルプランナーなどへ相談してみるのもよいかもしれません。

ポイント④:どのくらいの節税になるか

 さきほども述べましたが,特別控除が適用されると,不動産の売却益から最大で3,000万円が控除できます(売却益が3,000万円以内であれば税金が免除になります)。具体例をみてみましょう。

A 売却益が5,000万円の場合

  5,000万円-控除3,000万円=2,000万円

   ←この2,000万円に対して課税

B 売却益が2,000万円の場合

  2,000万円-控除3,000万円=▲1,000万円(マイナスは0としてカウント)

   ←控除後がゼロになるので,課税されない

A・Bで比較すると,特別控除が使えるかどうかで【約406万円】の税金の有無が変わってくる!

事例紹介(よくある疑問,他の制度の選択適用など)

次に,よくある疑問などを数パターンご紹介します。

被相続人が老人ホームで亡くなった場合でも適用されるのか?

 前述の「亡くなる直前まで居住」していなかった点が問題になりそうですが,以下の2つの要件を満たすことで適用対象となります。

 ①被相続人が,介護保険法等に規定する要介護認定を受けて,老人ホームなどに入所していた
 ②被相続人が老人ホームなどに入所してから亡くなるまでの間に,前述の2⑷にあるように対象の不動産が賃貸に出されたり,被相続人以外の者の居住用に利用されていない

共有で相続して売却した場合,各自3,000万円のうちいくらまでが控除されるのか?

 共有者ごとに3,000万円までの控除が可能です。

 例えば,兄弟3人で3分の1ずつの持分で相続した不動産を売却して9,000万円の売却益が出た場合,税金の計算ではまずは売却益を持分で按分するので,9,000万円×1/3で一人あたりの売却益は3,000万円ということになります。ここから各自が3,000万円ずつ控除されるので,売却益は0で,納税が不要になります。

空き家3,000万円控除と,自己の居住用不動産譲渡の3,000万円控除は併用可能か?

 同一年度に2つの特例を併用することは可能。ただし,両者の限度額は3,000万円となる(6,000万円ではない)。

相続税の取得費加算の特例とは選択適用

 相続税を納付して相続等により取得した財産を一定期間内に売却した場合,その納付した相続税の一部を譲渡資産の取得費に加算して譲渡所得を計算することができるという規定がある。ただし,空き家3,000万円控除とは選択適用となるため,売却前にどちらが得かを考えておく必要がある。

最後に

「空き家3,000万円の特別控除」についてポイントをしぼって解説してまいりましたが,いかがでしたでしょうか。
ポイントの中でも重要な2点を,最後に改めておさらいです。

 ① 適用を受けるかどうかのご判断はお早目に(適用を受けるためには期限がある)。
 ② 空き家を売却するか(特別控除を受けるか),空き家を活用するか,どちらが得かを慎重に判断。

以上をふまえ,みなさんにとって最適な方法を選択できるお手伝いとなれば幸いです。