離婚の財産分与には税金がかかる?節税方法についても税理士が解説!

家と電卓

離婚時の財産分与には税金がかかるのでしょうか?
かかるとすれば、それは財産分与を受ける側?それとも財産分与をする側?

ここでは、離婚時の財産分与にかかる税金について、経験豊富な税理士が役立つ知識をご紹介します。

財産分与を受けても、通常は税金がかからない

財産分与を受けても、通常は税金がかかりません。

これは、財産分与は贈与ではなく、夫婦の財産関係の清算離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。

財産分与請求権は、次のとおり、民法で定められた権利です。

民法第768条
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

財産分与を受けた際に税金がかかるケース

各種税金財産分与を受けた場合、通常は税金がかかりませんが、次のようなケースでは、税金がかかる可能性があります。

  • 分与された財産が多すぎる場合
  • 偽装離婚などと認められる場合
  • 不動産を財産分与された場合

財産分与を受けた際に税金がかかるケース

分与された財産が多すぎる場合

これは、分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合です。

この場合、多すぎる財産に対して贈与税がかかる可能性があります。

「多すぎる」の基準については、明確なものがあるわけではなく、個々の事例ごとに判断されます。

裁判例(東京高等裁判所 平成9年7月9日)では、「財産分与としてどの程度財産を分与するかは、離婚に至る経緯、双方の資産状況、有責性、扶養の必要性等、それぞれの夫婦が置かれた立場、条件等により千差万別なのであり、平均的な金額と比較して高いからといって、一概に財産分与として不相当に高額であるとはいえない」としています。

贈与税の計算

贈与税の金額は、贈与された財産の価額から基礎控除額110万円を差し引いた金額(基礎控除後の課税価格)に応じて、次の表に従って計算します。

贈与税速算表

例えば、1000万円の贈与を受けた場合は、次のような計算により、231万円の贈与税がかかります

1000万円-基礎控除額110万円=890万円
890万円×40%-125万円=231万円

財産分与を受けた際に税金がかかるケース

偽装離婚などと認められる場合

これは、財産分与には贈与税がかからないことを悪用して、本心では離婚する意思がないにもかかわらず、形式的に離婚して、財産分与したのちに、再び婚姻するような場合です。

この場合、財産分与された財産の全てに贈与税がかかる可能性があります。

財産分与を受けた際に税金がかかるケース

不動産を財産分与された場合

不動産を財産分与された場合、次のような税金がかかります。

  • 登録免許税
  • 固定資産税

登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記(名義変更)をする際にかかる税金です。
税額は、不動産の価額(固定資産税評価額)の2%です。

固定資産税

固定資産税とは、不動産などの固定資産を所有している人に課される税です。
税額は、不動産の価額(課税標準額)の1.4%です。
住宅用地の場合は、課税標準の特例措置があり、税額が軽減されます。

不動産取得税は通常はかからない

不動産取得税については、夫婦の実質的共有財産の清算のための財産分与の場合はかかりませんが、慰謝料や離婚後の扶養(生活保障)のための財産分与の場合は、かかる可能性があります。

不動産を財産分与した場合にかかる税金

夫婦と家と金不動産を財産分与した場合は、譲渡所得税がかかる可能性があります。
財産分与を受けた側ではなく、財産分与した側にかかる税金ですので要注意です。

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。

不動産を譲渡した場合、次の計算式で算出した「課税譲渡所得金額」に一定の税率を掛けた税額が課税されます。

◆課税譲渡所得金額=不動産の時価-(取得費用+譲渡費用)-特別控除

つまり、不動産の時価が、購入時よりも上がっているような場合には、譲渡所得税がかかる可能性があります。
不動産の時価から差し引くのは、取得費用(不動産の購入費用)と譲渡費用(譲渡時にかかる仲介手数料や印紙税など)ですので、住宅ローンが残っていても、税額が軽減されることはありません。

不動産を財産分与した場合にかかる税金

家を無償で財産分与した場合も譲渡所得税がかかる

家を有償で売却した場合だけでなく、無償で財産分与した場合も譲渡所得税はかかります。
無償のため、実際には所得があったわけではないのに、譲渡所得税がかかるのはなぜでしょうか。

裁判例では、次のように判示されています。

最高裁判所 昭和50年5月27日

譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであるから、課税所得たる譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償であることを要しないのであって、所得税法第33条第1項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうものと解すべきである。
そして、夫婦が離婚したときは、その一方は他方に対し財産分与を請求することができるが、この財産分与の権利義務の内容は当事者の協議等によって具体的に確定され、これに従い不動産の譲渡等が完了すれば、財産分与の義務は消滅し、この分与義務の消滅は、それ自体一の経済的利益ということができ、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者はこれによって分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきであるから、財産分与としてされた不動産等の譲渡は譲渡所得税の課税の対象となる。

住宅ローンが残っている家を財産分与した場合の税金

住宅ローンが残っている家を贈与した場合、贈与税の計算をするには、家の時価からローン残額を控除して課税価格を算出します。

一方、住宅ローンが残っている家を財産分与した場合は、そもそも贈与税がかかりませんので、住宅ローンが残っているかどうかは、特に関係ありません。

ただし、その家の時価からローン残額を差し引いた金額(家の実質的価値)が、財産分与の金額としては多すぎる場合には、その多すぎる分に贈与税がかかる可能性があります。

財産分与時の税金を節約する方法

節税離婚時の財産分与にかかる税金をなるべく節約するための方法や制度を紹介します。
具体的には、次のようなものがあります。

  • 財産分与はなるべく現金・預貯金で行う
  • 贈与税の配偶者控除(財産分与を受ける側にかかる贈与税の軽減)
  • 譲渡所得税のマイホーム特例(不動産を財産分与する側にかかる譲渡所得税の軽減)

財産分与時の税金を節約する方法

財産分与はなるべく現金・預貯金で行う

財産分与として不動産を受け取ると、登録免許税や固定資産税がかかります。
また、不動産の価値によっては、財産分与としては不当に高額になってしまう可能性もあり、その場合は贈与税がかかってしまいます。

さらに、財産分与をする側には譲渡所得税がかかる可能性もあり、そうなると、税金支払いの分だけ、慰謝料や養育費の支払いを減らされてしまう可能性もあります。

そのようなことを考えると、財産分与はなるべく現金や預貯金で適正な金額を受け取ることが、お互いのためと言えるでしょう。

財産分与時の税金を節約する方法

贈与税の配偶者控除(財産分与を受ける側にかかる贈与税の軽減)

配偶者から不動産を譲渡され、贈与税がかかったとしても、次の要件を充たせば、不動産の価額から基礎控除110万円に加えて、最高2000万円まで控除することができます。

つまり、譲渡された不動産の価額が2110万円以内であれば、贈与税はかからないことになります。
ただし、贈与の申告は必要となりますので、申告漏れがないようにご注意ください。

贈与税の配偶者控除の要件
  • 夫婦の婚姻期間が20年以上
  • 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

この制度は、あくまでも配偶者からの贈与の場合に適用されますので、離婚前に譲渡する必要があります。

ただし、そもそも財産分与として不動産を譲渡された場合は、贈与税はかかりませんので、この制度が適用されるのは、極めて限定的ではあります。

財産分与時の税金を節約する方法

譲渡所得税のマイホーム特例(不動産を財産分与する側にかかる譲渡所得税の軽減)

財産分与として不動産を譲渡した場合、譲渡所得税がかかることがありますが、次の要件を充たせば、譲渡所得から最高3000万円まで控除でき、譲渡所得税を軽減することができます。

譲渡所得は、不動産の譲渡価額から、不動産の取得費用と譲渡費用を差し引いた金額ですので、この金額が3000万円以内であれば、譲渡所得金額がゼロになり、譲渡所得税はかからないということになります。
ただし、譲渡所得の申告は必要となりますので、申告漏れがないようにご注意ください。

譲渡所得税のマイホーム特例の要件
  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
    ※以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売った年の前年および前々年に、この特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
  • 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

上記要件に、「売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと」とあるように、この特例を適用するには、当事者同士が夫婦や親子、生計を同じくする親族などの特別な関係ではないことが必要ですので、離婚後に譲渡する必要があります。

離婚・財産分与でお困りなら弁護士に相談しよう

離婚時の財産分与でお困りの場合は、弁護士に相談しましょう。

自分で相手方と交渉すると、多くの負担が伴うだけでなく、結果的に財産分与の金額で損をする可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとしては、主に次の3点があります。

  • 財産分与額が増額できる場合がある
  • 相手方と話すストレスを軽減できる
  • 書類作成や裁判手続きなどの手間を省くことができる

弁護士に依頼するメリット

財産分与額が増額できる場合がある

弁護士が財産分与を請求する場合、夫婦のさまざまな事情や過去の判例などを参考にして、適正な金額を算出します。

一方、自分で請求すると、そもそも適正な金額がわからないことに加えて、なるべく早く決着させたいという心理から、相手方が払いやすい不当に低い金額で妥協してしまう恐れがあります。

このような事態を防ぐためにも、弁護士に相談して適正な金額を計算してもらいましょう。そうすることで、自分ひとりで請求する場合よりも財産分与が増額できる可能性があるのです。

弁護士に依頼するメリット

相手方と話すストレスを軽減できる

例えば、浮気する夫や暴力をふるう夫とは、直接話すことに強いストレスや不安を感じるのではないでしょうか。

その点、第三者である弁護士が間に入ることで、直接話し合うことはほとんどなくなりますので、ストレスも大幅に軽減できます。

その結果、財産分与などの離婚の条件について、冷静に検討し判断することができるでしょう。

弁護士に依頼するメリット

書類作成や裁判手続きなどの手間を省くことができる

例えば、財産分与を請求する内容証明郵便を送付したり、裁判所に調停の申立てをしたりするには、書類収集や書類作成という手間がかかります。
また、専門的な知識が求められる書類ですので、自分で作成すると間違いなどの不備が発生する恐れもあります。
弁護士に依頼すれば、そのような手間を省き、間違いを犯すリスクを少なくすることができます。

離婚問題、財産分与問題にお困りの場合は、法律事務所MIRAIOにご相談ください!