【給料不払いは罰則の可能性】給料が払えない場合の3つの解決方法

給料袋と現金

「経営が悪化し現金が底をついた。労働者への給料が支払えないかもしれない…」

何らかの事情によって資金繰りがうまく行かなくなり、労働者への給料(賃金)の支払いに頭を抱えてしまうことは珍しくありません。しかし、実際に賃金が支払えなかった場合、労働者は生活に重大な影響を受け、雇用者は法的に罰せられる可能性があります。この記事では、労働者の賃金が支払えなくなった場合に起きる問題と、賃金不払いを回避するための3つの方法について紹介していきます。この記事を最後まで読めば、賃金不払いの危機に陥った時、どのような行動をとればいいのか解決策が見えてくるでしょう。

労働者の賃金の支払いについてのルール

目下の現金がどうしても足りなくなった時、雇用者は労働者への賃金の「遅配」や「不配」を検討せざる得なくなります。では、実際に賃金が「遅配」や「不配」などが行われた場合、雇用者にはどのようなペナルティが有るのでしょうか?
この章では、労働者への賃金支払いについて、法律ではどのような定めがあるのか、また、法律に則った支払いができない場合、雇用者はどのようなペナルティを受けることになるのかご紹介していきます。

絶対に守らなければならない「賃金支払いの5原則」

労働者への賃金の支払いは、定期的な収入を確保し、生活を安定させるために、労働基準法によって5つルールが定められています。

    第24条(賃金の支払)

    賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は命令で定める賃金について確実な支払の方法で命令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

    ② 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので命令で定める賃金(第89条第1項において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

    この条文を要約すると、以下のようになります。

    通貨払いの原則

    賃金は通貨(現金)で支払わなければなりません。

    直接払いの原則

    賃金は直接本人に支払わなければなりません。家族や弁護士が代理人になっていても,代理人に対して支払うことはできません。

    全額払いの原則

    賃金は全額をまとめて支払わなければなりません。本人の同意なしに、強制的に賃金の一部を控除することはできません。ただし、税金や社会保険料など、法律に基づく公的控除は行う事ができます。

    毎月1回以上の原則

    賞与などの臨時の賃金を除いて、毎月一回以上の頻度で賃金を支払わなければなりません。

    一定期日払いの原則

    従業員が生活の資金繰りの目途がつくように、「毎月25日に支払う」など、毎月一定の期日を定め、定めた支給日に支払わなければなりません。

    賃金の支払いができないと30万円以下の罰金の可能性

    雇用者が「賃金支払いの5原則」に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。また、労働基準法第24条に違反すると、労働基準監督署から調査を受ける可能性があり、調査の結果、違法性が認められると、刑事事件として立件され、更なる処罰の対象となります。

    従って、会社にお金が無いからといって、雇用者が勝手に従業員への賃金の支払いを遅らせたり、分割払いを行ったり、賃金の一部を現物支給するなどを行った場合、処罰を受ける可能性があります。労働者への賃金は常に正しく支払い、賃金の支払いを滞らせてはなりません。

    賃金が払えないと、労働者・雇用者どちらにも影響がある

    労働者への賃金を払えなかった場合、労働者と雇用者双方に、重大な影響が有ります。

    労働者の生活への影響

    貧しい人

    生活の質が損なわれる

    受け取れるはずの賃金が、支払われなかった場合、従業員は本来使えるはずだったお金を使う事が出来ません。そのため労働者は、本来ならば行けた旅行を我慢する、安い代用品で賄うなど、出費を抑えるために、生活の質を落とさなければなりません。生活の質が落ちることは、精神・身体に大きなストレスを与え、労働意欲の低下にもつながります。

    家賃の滞納で大家との信頼関係が壊れる

    賃金の支払いが遅れると、労働者が家賃を支払えなくなってしまう可能性があります。特に賃貸住宅の場合、民間人同士で契約を締結している場合も多く、一度の家賃の滞納でも信頼関係に大きな影響を与えます。場合によっては、労働者が大家から更新契約を断られ、不本意な引っ越しをせざるを得ない状況になる可能性もあります。

    借入れを始めるきっかけとなる

    もとより、金銭的な余裕が無い労働者の場合、賃金の支払いが少しでも遅れると、生活が成り立たなくなることがあります。どうしてもお金が無く、頼れる相手がいない場合、労働者は銀行やカード会社から借入れを行い、何とか生活を成り立たせなければなりません。生活費の借入れをきっかけに、多重債務に陥る人は少なくありません。本来不必要な借入れを行わなくて済むように、労働者への賃金の支払いは遵守しなければなりません。

    会社への影響


    働者との信頼関係が壊れる

    当然ながら、賃金を支払ってくれない会社を、信用し続けられる労働者はほとんどいません。労働者との信頼関係が壊れた場合、労働意欲が低下し、退職の原因となったり、恨みを持った労働者が、取引先に経営状態を吹聴したり、情報漏洩を行うなどをし、取引への悪影響を及ぼす可能性があります。

    法的罰則を受ける可能性がある

    先述の通り、労働者への賃金が適切に支払われなかった場合、労働基準法違反により処罰が適用される可能性があります。

    遅延損害金の発生

    本来の支払日よりも賃金の支払いが遅れた場合、年利6%(支払期日が令和2年4月1日以降の賃金については年利3%)の遅延損害金を上乗せして賃金を支払わなければなりません。
    労働者の数が多い場合、数日でも大きな出費となり、経営に負担をかける可能性があります。

    例)月給25万円の労働者を1000人雇用し、10日賃金支払いが遅延した場合
      (25万円×6%×10/365日)×1000=410,959

    訴訟を起こされる可能性がある 

    賃金支払いの遅れが慢性的になっていたり、長期間続いていたりすると、しびれを切らした労働者が、賃金を回収するために裁判を起こす可能性があります。また、賃金未払いのために裁判が起こされたことがメディアに取り上げられれば、企業イメージは、あっという間に悪化してしまいます。取引先との関係や、将来の経営戦略にも大きな痛手を被ることとなるでしょう。

    賃金不払いを回避する3つの方法

    コインの上を歩く人々労働者への賃金不払いを回避する為には、現金を確保する必要があります。会社の現金が底につき、賃金の支払い目途が立たなくなった時には、これからご紹介する3つの事から始め、現金を確保しましょう。

    役員報酬の減額

    会社のお金が無くなった時、雇用者が真っ先にできることは、役員報酬を減額することです。
    本来、事業年度の途中で役員報酬を変更することはできませんが、正当な理由があれば、事業年度の途中でも役員報酬を変更することができます。一般の労働者よりも経営状況の把握をしている役員の立場であれば、役員報酬の減額がやむを得ない状況である事は十分に理解できるはずです。従業員への賃金不払い回避する為に、まずは役員報酬の減額を検討しましょう。

    借入をする

    役員報酬を減額しても、労働者の賃金を支払うことが難しい場合、銀行や貸金業者などから融資を受けることを検討しましょう。一般的に労働者の人件費は、事業資金として認められ、ビジネスローンで借入れが可能です。ビジネスローンは審査期間が比較的短く、無担保で借入れができるため、急ぎで現金が必要な場合に、重要な選択肢となります。ただしビジネスローンには、比較的金利が高く返済期間が短い、といったデメリットもあります。近いうちに現金が入る目途が無ければ、危険な選択となる事も理解しておかなければなりません。

    取引先に交渉してみる

    何をしても現金の確保が難しい場合、今ある現金を少しでも多く残すため、買掛金が有る場合は取引先に支払いを待ってもらえないか交渉してみましょう。また、売掛金がある場合には、早めに回収させてもらえないかも交渉してみましょう。だたし、交渉する際には取引先に現状を打ち明ける必要があるため、今後の取引に悪影響がでてしまうリスクがあります。支払いが遅れる場合にはいつまでに支払えるのか、回収を早めたい場合はどうして早めたいのか、取引先に協力してもらえるように、誠意をもって交渉しましょう。

    どうしても払えない場合は、誠意をもって労働者に状況を説明する

    深く謝罪する人様々な努力を尽くしても、賃金を支払うことができない場合、労働者に現状を説明し、経営状態の理解を求めましょう。その上で、どのような方法であれば賃金支払いができるのかを検討し、労働者にとって最も不利益の少ない方法で賃金の支払いを選択しましょう。どうしても「賃金支払いの5原則」に則った賃金の支払いが難しい場合、以下の様な方法が考えられます。

    • 本来の支払日よりも遅れて賃金を支払わせてもらう
    • 分割払いに応じてもらう
    • 賃金の減額に応じてもらう

    当然、上記の様な支払いを勝手に行うことは労働基準法違反になり、罰則を受ける可能性があります。労働者の理解無しに、このような支払いを行うことは絶対に許されません。深い謝罪の意思を持ち、誠意をもって労働者に説明し、なぜこのような支払い方法が検討されているのか、理解してもらえるように努めましょう。

    最終的には破産することで、労働者の賃金が守られる可能性がある

    経営状態の回復が見込めず、労働者の賃金が支払えない場合、最終的には破産することも検討しなければならなくなります。破産を選択せざる得ないことはとても苦しい事ですが、会社が破産することによって、労働者は未払賃金が回収できる可能性があります。

    破産手続きにより、賃金が回収できる可能性がある

    労働者の賃金が未払のまま破産した場合、その未払賃金は労働者の「労働債権」となり、労働者は債権者となります。労働者が債権者となった場合、会社が破産手続きを行うことで、労働者は、支払われなかった賃金を取り戻せる可能性があります。

    「未払賃金立替制度」によって救済される可能性がある

    賃金が支払われないまま退職した場合、労働者は「未払賃金立替制度」により、救済措置を受けられる可能性があります。「未払賃金立替制度」にはいくつかの適用条件があり、会社が破産していることも適用条件の1つとなります。

    「未払賃金立替制度」について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照下さい。

    「未払賃金立替制度」を利用できれば、従業員は一定額のお金を取り戻せる

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    さいごに

    最後に、この記事の重要ポイントを振り返ってみましょう。

    ≪1≫賃金支払いのルール

    • 労働者の賃金の支払いについては「賃金支払いの5原則」というルールがある

    賃金支払いの5原則

    • 通貨払いの原則
    • 直接払いの原則
    • 全額払いの原則
    • 毎月1回以上の原則
    • 一定期日払いの原則
    • 「賃金支払いの5原則」に違反すると30万円以下罰金になる可能性がある

    ≪2≫賃金が払えない場合に起きる問題

    従業員の生活への影響

    • 生活の質が損なわれる
    • 家賃の滞納で大家との信頼関係が壊れる
    • 従業員に借り入れをさせる可能性がある

    会社への影響

    • 従業員との信頼関係が壊れる
    • 法的罰則を受ける可能性がある
    • 遅延損害金の発生
    • 訴訟を起こされる可能性

    ≪3≫賃金不払いを回避する3つの方法

    • 役員報酬の減額
    • 借入をする
    • 取引先への相談

    ≪4≫どうしても払えない場合は、労働者に払える方法を説明する

    • 本来の支払日よりも遅れて賃金を支払わせてもらう
    • 分割払いに応じてもらう
    • 賃金の減額に応じてもらう

    ≪5≫破産することで、労働者の賃金が守られる可能性がある

    • 賃金未払いのまま破産すると、労働者が債権者となる
    • 未払賃金立替制度を利用できる可能性がある

    最後までお読みいただきありがとうございました。